推しに告白(嘘)されまして。
14.夢のような時間は終わりを告げる。

1.冬休みを終えて




*****



あっという間に年末年始が過ぎ、冬休みが終わった。
寒空の下、新学期を迎えた校内の下駄箱前で、私は今日も朝から生徒たちの波に厳しい視線を向けていた。
もちろんここに立っている理由は、朝の委員会活動でだ。

生徒たち1人1人をじっくり見つめながら、私は充実していた冬休みに思いを馳せていた。

ウィンターカップでの私の推し、悠里くんのかっこよさが忘れられない。コートを縦横無尽に走り回る勇姿にどれほど感動し、またその姿に少しでも彼女という名の壁として貢献できたことがどれほど誇らしかったことか。
少し遅れた悠里くん一家とのクリスマスは最高に楽しかったし、クリスマスプレゼントまでもらえて、最後にはキ、キスまでしてしまった。

なんと幸せな冬休みだったか。
私は前世でどんな徳を積んでいたのか。

悠里くんのことで頭がいっぱいだったが、ここでふと冬休みといえばと、千晴の顔も思い浮かんだ。

この冬休みで何かと謎の多かった千晴を、私は少しだけでも知れた気がした。
家庭環境や今までしてきた苦労、きっと私が知らない千晴の一面はまだまだたくさんあるのだろうが、それでも少しでも知れたことに意味がある。
どこか寂しげで独りぼっちな千晴を私はもう1人にはしたくない、と思った。
それに千晴とのクリスマスも案外楽しかった。
2人でゆっくりと過ごした時間は暖かく穏やかで、とても優しい時間だった。

千晴のことを考えると、胸がぎゅう、と締め付けられる。
暖かくて、でもどこか苦しくて切ない。
原因はわからない。正体不明の不調だ。

…いけない、いけない。
今はこんな考えてもわからないことに時間を割いている場合ではない。



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