推しに告白(嘘)されまして。
「あのねぇ。また同じことを繰り返すのならこっちにも考えがあるよ?反省文また書かせるよ?」
こうなったら脅してやろうと思い、そう言って厳しい視線を向けると、千晴は何故か嬉しそうに笑った。
「いいよ。また監督してね、せんぱい」
甘く微笑む千晴にドキン、と心臓が跳ねる。
全くそういう場面ではないはずなのに。
朝日と相まって、綺麗さに磨きがかかっているからなのか。
そんなことを思っていると、とんでもないイケボが私に声をかけてきた。
「おはよう、柚子」
黒色のサラサラの髪。
整った爽やかな顔立ち。バスケをするために生まれてきたと言っても過言ではない、恵まれすぎている高身長。
私に微笑んでいたのは、私の推し、悠里くんであった。
悠里くんは朝練終わりのようで、練習着姿だった。
それも私がクリスマスプレゼントであげた、あの淡い水色の服を着ていた。
とても似合っており、眩しい。
しかも当然のように着てくれているだなんて、なんと嬉しいことか。
「悠里くん、おはよう」
嬉しくて嬉しくてつい緩くなってしまう口元に力を込め、いつも通り悠里くんに挨拶を返す。
しかし悠里くんはどこか暗い表情を浮かべていた。
一体、この一瞬で何が悠里くんの表情を曇らせてしまったのだろう。
このままではいけない、と何が原因なのか突き止めようとした、その時。
私は悠里くんの暗い視線の先に気がついた。
悠里くんの視線の先には、我が物顔で私のマフラー(過去)を巻いている千晴の姿があったのだ。