推しに告白(嘘)されまして。
ま、まさか運命diaryの舞台になった場所を直接見ることができるだなんて!
「す、すごい!すごいよ!ありがとう!沢村くん!」
私は今、自分が漫画の世界にいるような喜びを感じながらも、沢村くんにお礼を言うと、早速スマホ片手に境内を歩き始めた。
あの立派な御神木も、古めかしいがどこ神聖な雰囲気のある拝殿も見覚えしかない。
あの拝殿にある賽銭箱の前で、運命diaryの主人公たちが今後の話をしているところに、敵が現れ、そこからこの神社を舞台に戦闘が巻き起こるのだ。
漫画で見たことのある景色を見つけては、そのシーンに思いを馳せ、パシャパシャと何枚も何枚も写真を撮る。
もちろんそこにいる私の推しこと、沢村くんの写真を撮ることも忘れない。
景色を撮って、沢村くんを撮る。景色をまた撮って、また沢村くん。
それを何度も何度も繰り返し、私は最高の気分になっていた。
私のスマホの中が推しと好きな漫画の舞台の風景でいっぱいだ。素晴らしい!
そうやって夢中になっていると、どこからかこちらをじっと見つめる気配を感じたので、私はその気配を見逃さず、気配を感じる方へと、バッと勢いよく首を動かした。
するとそこにはスマホ越しに私を微笑ましそうに見る沢村くんの姿があった。
「ええ!?や、やめて!」
まさか沢村くんに撮られているとは思わず、慌てて沢村くんの方へと駆け寄り、沢村くんのスマホのレンズを手で塞ぐ。
「え?何で?」
「な、何でって私の写真なんて撮っても面白くないし、必要ないじゃん!」
私と沢村くんでは作りが全く違う。
沢村くんほどのイケメンならどこから撮ってもかっこいいが、私のような凡人など、どこから撮っても普通であり、面白くも何ともないはずだ。
そんな不必要なものが推しのスマホに存在するなど耐えられないし、何より恥ずかしい。
「必要だよ?俺だって鉄崎さんと同じように恋人の写真撮りたいし、欲しいよ?」
必死で不必要な理由を述べる私を見て、不思議そうに首を傾げる沢村くんに顔がどんどん真っ赤になっていく。
し、心臓に悪すぎないか?私の推し。