推しに告白(嘘)されまして。
「へ、変顔しているからダメ!」
顔を真っ赤にしたままそう叫ぶと、私はその場から急いで離れた。
我ながら全く可愛げがない。
だが、あのままでは沢村くんで頭がいっぱいになり、他の何にも手がつけられなくなるところだった。
危険すぎるぞ、推し。
少し遠くにいる沢村くんに背を向け、真っ赤になった頬を落ち着かせる為に、私は両手で両頬を包み込み、ぎゅっと瞳を閉じた。
「ふふ」
そんな私を沢村くんがおかしそうに見つめ、写真に収めていたことなんて、もちろん私は知らない。
*****
運命diaryに登場する神社を満喫し尽くした後、私たちは映画館へと移動した。
そしてそのまま早速チケットを買おうとした私だったが、それを沢村くんに止められた。
何と沢村くんがもうスマホで2人分のチケットを用意してくれていたのだ。
何て計画的で、スマートなのだろうか。
「これ、チケット代」
「え?」
ポップコーンやジュースの注文を終え、カウンターの前で沢村くんと2人で待っている間に、私は映画代+今日はありがとう代として5000円札を沢村くんに差し出した。
そんな私を見て沢村くんが一瞬固まる。
だが、固まったのはほんの一瞬だけで、沢村くんはすぐに困ったように笑いながら両手を小さく左右に振った。
「いやいやいいよ。俺が誘ったんだし。受け取れないから」
「いや、私も見たかったし、受け取って!」
「いや、本当にいいから」
ぐいぐいと5000円札を沢村くんに差し出す私の手を沢村くんがぐーっと押し返してくる。
それから私の手にある5000円札を見て、「いや、チケット代にしては多くない?」と困惑していた。