推しに告白(嘘)されまして。




「ふーん」



私の話を聞き終えた千晴は無表情のまま、ただそう言った。それから肯定も否定も共感もアドバイスも何もせず、視線を伏せた。
長いまつ毛が千晴の顔に影を落とす様を、私はただただじっと見て、千晴の次の言葉を固唾を飲んで待つ。
すると数十秒後、千晴は軽く足を揺らしながら、ゆっくりと他人事のように言った。



「確か千夏が毎年チョコ作ってるよ。一緒に作れば?」

「…え、いや、いやいやいや」



千晴からの思わぬ提案に、私は首をゆるゆると横に振った。



「さっきも言ったけど、私、壊滅的に料理ができないんだよ?私なんかいたら、千夏ちゃんのチョコ作りの邪魔になるし、そんなの申し訳なさすぎるから。却下です」

「えー。でも大丈夫だと思うけど?とりあえず千夏と話してみたら?」

「え」



断ったはずなのに、何故か千晴がスマホをタップし始めて、そのままスマホの画面を私に向ける。
そこには、ゴールデンレトリバーの子犬のアイコンと〝千夏〟の文字が並んだ、通話の発信中画面があった。
しかもビデオ通話だ。



「え、え、ちょ、千晴!?」



突然のことに動揺を隠せず、その場でおろおろしてしまう。その間も発信音は鳴り続け、ついにその音は止まった。



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