推しに告白(嘘)されまして。
『どういたしましたの?お兄様?』
パッとスマホの画面に現れたのは、千晴の妹、千夏ちゃんだ。
千夏ちゃんはスッとした凛々しい表情で、こちらをまっすぐと見つめていた。
しかしその表情は一瞬で崩れ去った。
『あら。あらあら。お義姉様じゃないの。お兄様のスマホからどうしたのかしら?わたくしにラブラブアピールのつもり?』
ふふ、と嬉しそうに瞳を細める千夏ちゃんに、私は何から言えばいいのやら、と悩んでしまう。
ラブラブアピールではないことを言えばいいのか、そもそも私が自主的に千晴のスマホを使っているわけではないことを言えばいいのか。
それとも電話の目的を伝えるべきか。
ほんの一瞬だけ、言葉を詰まらせていると、私が話すよりも早く、千晴はスマホを私に向けたまま、千夏ちゃんに話し始めた。
「千夏、今年のバレンタインもチョコ作るんでしょ?なら今年は先輩とチョコ作ってよ」
突然聞こえてきた千晴の声に千夏ちゃんは、『あら、お兄様』と、落ち着いた様子で答える。
それからあごを少しあげ、口元をクイっと上げた。
『もちろんいいですわよ!一緒に作りましょう!お義姉様!』
「ま、待って待って!」
快く承諾してくれた千夏ちゃんに、私は慌てて両手を伸ばす。