推しに告白(嘘)されまして。
「やっぱり、お兄様はお義姉様を愛しているのね。あのお兄様が誰かの為にわざわざ何かをするはずがないもの」
いつの間にか私の近くにいた千夏ちゃんが、納得したように力強く何度も頷いている。
そしてそのまま、千晴の横に移動し、「お兄様、わたくしもご一緒していいかしら?」と、ヴァイオリンを構えた。
そんな千夏ちゃんに千晴は無言で頷き、華守兄妹による、ピアノとヴァイオリンのセッションが始まった。
千晴のピアノに千夏ちゃんのヴァイオリンも加わり、より一層、美しい旋律がこの部屋を優しく包み込む。
美しい2人とその音色に、私は感動した。
生地の安否を気にしている場合ではない。
この素晴らしい瞬間を一瞬たりとも見逃さないようにしなければ。
しばらく2人の美しい演奏は続き、やがてゆっくりと終わりを迎えた。
「…す、すごい。ありがとう、2人とも」
演奏を終えた2人に、私はその場で大きな拍手をする。
たった1人しかいないので、どんなに頑張っても小さな拍手になってしまうが、本当はもっと大歓声を2人に聞かせたいくらい、素晴らしい演奏だった。
ずっとパチパチと拍手をする私に、千夏ちゃんは「まあ、突然ね」と誇らしげに、千晴は「ふふ、どういたしまして」と嬉しそうにその綺麗な瞳を細めた。