推しに告白(嘘)されまして。
「じゃあ、行こっか」
私の返事に悠里くんが嬉しそうにその瞳を細める。
それから悠里くんは私の手を優しく取ると、リードするように歩き始めた。
悠里くんの私よりも太くしっかりとした指が、私の指に絡む。
ただ握られたのではなく、優しく絡まれた指に、私の心臓はまた跳ねた。
…ずるい。こんなの反則だ。
頬に熱を感じながら私はただただ悠里くんと共に歩いた。
*****
悠里くんに連れられてやって来たのは、街から少し歩いたところにある川辺だった。
夕方の川辺には、帰路についている様子のサラリーマンや、犬の散歩をしているおじいさん、遊んでいる子どもなど、さまざまな人がいる。
それぞれが思い思いに過ごす川辺で、私たちは適当な場所に座った。
そしてそんな私の膝には、悠里くんの長袖の練習着がかけられていた。
ここに座る時に悠里くんが「これ、使って?」とスマートに鞄から出して、かけてくれたのだ。
最初はあまりにも恐れ多すぎて「大丈夫です!」と何度も何度も断りを入れたのだが、悠里くんに押されて、結局私は練習着を借りていた。
「部活の最初に着てたやつだから汗は大丈夫…だと思う」
未だにおろおろしている私に、悠里くんが少しだけ眉を下げて笑う。
その笑顔があまりにも眩しくて、私はつい反射的に瞳を細めた。
んん、好き。
思ってはいけない感情がまた溢れて、胸が苦しくなる。
私はなんて最低なのだろうか。
自然にまた下がってしまった視界に、悠里くんの練習着が入る。
見覚えのあるこれは、私がクリスマスの時に悠里くんにあげたものだった。
今でも大切に使ってくれていると思うと、嬉しくなると同時に辛くなる。
いろいろな感情が押し寄せて、ぐちゃぐちゃになった感情に、私はギュッとまぶたを閉じた。