推しに告白(嘘)されまして。
「柚子、これ、あげる。食べて」
私の隣に座る悠里くんが、そっと私に何かを差し出す。
なんだろう、と悠里くんの手を見れば、そこには小さなチョコがあった。
「…ありがとう」
それを受け取って、口に入れる。
すると、口いっぱいに甘くて少しほろ苦いチョコの味が広がった。
「美味しい…」
感じる甘さに自然と頬が緩む。
今日初めて、自然と笑えた気がする。
柔らかくなった私の雰囲気に、悠里くんはホッとしたように口元を緩めた。
「…よかった。疲れた時とか落ち込んでいる時に、ここの景色を見ながらのんびりチョコを食べるのが、俺のルーティンなんだ」
私にかけられた優しい声音に胸が熱くなる。
私の推しが最高に優しい。
最高の彼氏すぎる。
きっと理想の彼氏総選挙inワールドが開催されたらぶっちぎり一位を獲得できるだろう。
悠里くんがこんなにも完璧で優しい彼氏でいてくれるのは、私のことがちゃんと好きだから。
私はそれを痛いほど知っている。
けれど、私は悠里くんと同じではない。
推しとして、悠里くんのことが好きなのだ。
…最低だ、私。
苦しいほどの罪悪感が押し寄せて、息の仕方がわからなくなる。
目の奥に熱が集まり、今にも涙が溢れそうだ。
だが、私には泣く資格はない、と私は何とかそれを堪えた。