推しに告白(嘘)されまして。




「彼氏じゃない俺は頼れない?」

「いや!そんなことないです!」



どこか寂しそうな表情を浮かべた悠里くんに、私は気がつけば声高らかにそう言っていた。

ぐらぐらだった決意が崩壊した瞬間だった。

あぁ、と数秒前の自分の反応に、膝から崩れ落ちそうになる。
…が、そんな私に「じゃあ、どうぞ」と嬉しそうにもう一度悠里くんが左腕を差し出してくれたので、何とか耐えることができた。

悠里くんの左腕に手を置く私に、生徒の誰かが気づき、小さく声を上げた。



「ねぇねぇ、あれ見てっ。鉄子と王子、本当仲良いよねっ」



興奮気味な女子生徒の声に、一斉にその場にいた生徒たちがこちらに視線を向ける。



「らぶらぶだ…」

「おしどり夫婦ってやつ?」

「アツいねぇ」



それから生徒たちはざわざわと騒ぎ出した。
別れてもあまり変わらない状況に、私は何とも言い難い複雑な気持ちになったのだった。



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