推しに告白(嘘)されまして。
「「…」」
お互いに一言も喋らず、足を進める。
普段なら別に沈黙が続いても気になるタイプではないのだが、千晴の私を責めるような視線に、今日は気まずさを感じた。
私がだんまりを決め込んだことによって、しばらくその気まずい空気が私たちの間に流れる。
千晴に視線を向けなくても、千晴の不満が痛いほど伝わってくる。
…あぁ、もう!
「…千晴のこと考えてたの。手のかかる厄介な後輩だな、て」
沈黙と千晴の痛すぎる視線に耐えきれず、ついに私は観念したように口を開いた。
〝好き〟という感情だけは伝わらないように言葉を選びながら。
すると千晴は「はは」と軽く笑った。
それからいつもと変わらない飄々とした態度で私に問いかけた。
「手のかかる厄介な後輩は嫌い?」
確かにいつもと同じはずなのに、その瞳にはどこか焦がれるようなものがあり、真剣だ。
切実にも見える千晴に、私は愛おしさが溢れて、思わず口元を緩めた。