推しに告白(嘘)されまして。
「…やっぱ、好き」
唐突に千晴から漏れた言葉。
そのたった二文字が私の心臓をドクンッと大きく高鳴らせる。
気がつけば千晴はその場で足を止め、無表情にだが、迷子のような瞳で私を見た。
どうすればいいのかわからない。そう、私に視線で訴えるように。
「先輩、ずるすぎ。好きになるじゃん。そんなの」
あの千晴が珍しく私に戸惑いを見せ、視線を伏せる。
その伏せられた千晴の長いまつ毛が、心なしか震えているように見え、ぎゅうと心臓が締め付けられて、苦しくなった。
私が千晴をそうさせているのに。
「好き。大好き。アイツじゃなくて、俺を選んで?」
もう一度視線をあげ、今度は無表情ながらも真剣な眼差しで、千晴が私を見据える。
「…こんなにも好きにさせた責任取ってよ」
それから砂糖をドロドロに煮詰めたような声音で、そう言った。
千晴のその胸焼けしてしまいそうな甘さに、鼓動がどんどん加速する。
切なくねだるように、こちらを射抜く強い千晴の視線は、何よりも私の体を熱くさせた。
「俺だけを見て、先輩」
千晴には応えない。
それが今の私のスタンスだ。
だが、初めて見た私の愛を弱々しく求める千晴の姿に、私の口は考えるよりも先に動いていた。