推しに告白(嘘)されまして。
「一緒に写真撮ろう?」
「へ」
推しのお願いがあまりにも盲点すきで、思わず間の抜けた声を出してしまう。
沢村くんが私と一緒に写真を撮る?
あの造形美の横に私が失礼する?
おこがましくない?
「いや、ちょっとそれは…」
「でもさっきのこと悪いと思っているんだよね?だったらお詫びも兼ねて撮ってほしいな。ね?」
「…」
キラキラ顔が物欲しげにこちらを見つめ、ついに何も言えなくなる。
推しからのお願いを断るなんて言語両断。
どんなにおこがましくてもやるしかない。
「…わかった」
「ありがとう、鉄崎さん」
渋々了承した私を沢村くんが嬉しそうに見る。
この笑顔が見れたのならもう何でもいい気がしてきた。
沢村くんがスマホを縦に持ち、画角に私が入るようにこちらに近づく。
横持ちならそんなに近づかなくても画角に入るのだが、縦ではどうしても近づかなくてはならない。
画角に入るように近づいた距離に私の心臓はもうドキドキでお祭り騒ぎだ。
推しの体温を感じ、推しの優しいシャンプーの香りが香るこの距離が許されてしまう彼女とは、とんでもない立場だ、とクラクラしながら改めて痛感してしまう。
ドキドキしすぎて変な顔にならないように私は一生懸命沢村くんのスマホに向かって笑顔を作った。
それから沢村くんはスマホのシャッターを押した。
キラキラ爽やか笑顔の沢村くんと硬い笑顔の私。
明らかにかっこよすぎる沢村くんの横に、いてはいけない異物感のある私だったが、写真を撮り終えた後、沢村くんは何故か嬉しそうにその写真を見ていた。
隣に不審者がいる写真だというのに。
そしてこの半分は神々しくて、半分は禍々しい写真を私と何と沢村くんまでスマホのホーム画面にしたのであった。