推しに告白(嘘)されまして。
*****
何とも言えない空気の中、ただただ私1人が沢村くんと千晴と交互に喋る状況が続き、ついに駅まで辿り着いた。
ここでやっと私たちは解散だ。
とても、とても、長い道のりだった。
やっとの思いで、改札を通り、あとはそれぞれの線の元へ向かう為に解散する…そう思っていた。
「じゃあね、先輩」
「うん、またね、千晴。沢村くんもまた明日」
笑顔でこちらに手を振る千晴に私も手を振り、沢村くんにも別れの挨拶をして、2人に背を向ける。
それからいつもの道を歩き出したのはいいのだが、隣には何故か沢村くんがいた。
あれ?
いつもならここで別れるのに。
「ど、どうしたの?沢村くん?こっちは反対方向だったよね?」
いつもとは違う行動をする沢村くんを不思議に思い、そう沢村くんに問いかける。
するとそんな私に沢村くんは言いづらそうに口を開いた。
「うん。でももう少しだけ鉄崎さんと一緒にいたくて…」
恥ずかしそうにそう言って、私から視線を逸らす沢村くん。
俯く沢村くんの耳がほんのり赤いことに気づき、胸がきゅーんと締め付けられた。
か、可愛い。私の推しが可愛すぎる。
心臓が推しの可愛さに悲鳴をあげている。
相変わらずの推しの破壊力にメロりながらも、私は確かな足取りで、沢村くんの隣を歩き始めた。