推しに告白(嘘)されまして。
「わ、私、初めて家族以外の男の人と2人で遊んだんだけど、本当にあの日は楽しかったし、素敵な1日すぎて忘れられないんだよね。沢村くんがその相手だからすごく緊張したし」
「え?緊張してたの?」
「うん」
何とか沢村くんにも話に入ってもらおうと、沢村くんとの初デート話を沢村くんに振ってみると、沢村くんは何故かとても意外そうにこちらを見た。
え、何故?
「…え、あ、そっか。緊張してくれてたのか…」
それから何故か噛み締めるようにそう言うと、口元を手で覆い、視線を下へと向けた。その大きな手からわずかに見える沢村くんの頬が少し赤い気がするのは気のせいなのか。
「映画のチケットもらえたし、また行かない?」
「っ!もちろん!」
沢村くんからのまさかの2度目のデートの打診に嬉しさのあまり食い気味に返事をする。
次の約束があることほど嬉しいことなんてない。
私と沢村くんには未来があるのだ。
「次は何観る?」
「え、そうだね…。あ、千晴はどんな映画が…」
沢村くんの質問に答える前に、話の輪を広げようと、千晴の方を見れば、今度は何故か千晴がどこか面白くなさそうにこちらを見ていた。
…何故。一瞬沢村くんと話していただけじゃん。
千晴をのけ者になんてしていないじゃん。
まるで被害者のようなその視線はなんだ!
「ねぇ、千晴?千晴はどんな映画を普段見るの?好きな映画とかない?」
「…アクションとか。ミステリーも好きかも」
「うんうん。なるほどね。沢村くんはどんな映画が好き?」
「俺もアクションかな。コメディとか恋愛ものとか、結構何でも見るかも」
「へぇ!じゃあ、私たちみんなアクション映画好きなんだねぇ。私もアクション映画が好きで…」
何とかこの3人で話せないかと、2人の間で一生懸命話す私だが、千晴は無表情に、沢村くんはいつもの笑顔で私と話すだけで、千晴と沢村くんが直接話すことはない。
結果、私が黙ってしまえば、何とも気まずい無言の時間が発生してしまうという事態に陥り、私はただただ懸命に2人の間で話し続けるしかなかった。
お願いだ、2人でも話を広げてくれ。