ひとりぼっちの転生幼女でしたが、最愛の家族ができました~実は神子だった私、ハイスペ兄から溺愛されつつ癒しの才能発揮します!~
翌日。
施設からは、わりとあっさり出ることができた。緊張していたのがバカらしくなるくらい、本当にスルッと出ることができたのだ。
十二番もびっくりしていたから、計画通り(ニヤリ)ではなかった模様。
他の子がついていきたいとか言ったらどうしようという心配は杞憂だった。十二番の『子守唄で眠らせよう』という案にのったところ、これまたあっさり寝たという……異世界の子どもたちがチョロすぎる件。
「おい、あまりキョロキョロするなよ」
「ふぉぉ……」
無理だよ無理。キョロキョロ不可避です。
なにせ今世の私にとっては、初の外出in異世界なのだから。
海外旅行の観光雑誌に載っているような石造りの町並みと石畳みに大興奮だし、見たことのない果物やら雑貨やらに興味津々だ。
施設の食事は小さい子が食べやすいように柔らかく煮込んだ料理ばかりで、果物も切って出されている。食材そのものを見たのは初めてだから、不思議な色や形を見てつい問いかけてしまう。
「これ、なに? たべもの?」
「いいからいくぞ!」
えー、気になるよー。
施設の中庭は芝生しかなかったし、なんかこう余計なものというか……人間以外の生き物がいなかった。
それだけじゃない。埃ひとつ落ちていない床や廊下も、清潔すぎて不自然だったんだなぁと外に出たことで気付いた。
施設の子どもたちの中で十二番が他の子と違って見えたのは、しょっちゅう脱走することで外から刺激を受けているからかもしれない。
かくいう私も、前世の記憶を思い出すまでは純粋培養(?)な幼女だったのだろう。今となっては前世の記憶が混ざって、よくわからなくなっちゃったけど……。
ずんずん進んでいく十二番の背中を、ぽてぽて歩いて追っていく。屋台が並ぶ細い道から、やがて大通りに出た……かもしれない。
なぜはっきりしないかというと、細道が終わったと同時に私の目に入ってきたのは、とにかくすごい数の人、人、人──。
「どうしよ……」
幼女の身長では、色とりどりの服と靴しか見ることができない。
こんなにたくさんの人たちはなにを見て興奮し、騒いでいるのだろう。今の私は、周りに押しつぶされないよう、避けるだけで精いっぱいだ。
こんなんじゃ神王様どころか、施設に帰れるかどうかも怪しい。
というか、今帰るのは無理だ。気付けば十二番の姿がどこにも見えないのだから。
心は社会人でも体は幼女、落ち着いて対応……は無理だ。詰んだ。
がっかりしている私の目の前を、キラキラしたなにかがフワッと横切った。
「ん? なんだろ?」
最初は陽の光に照らされて、キラキラしている虫かなと思った。そういえばこの世界で虫を見たことがないなぁと首を傾げる。
飛んでいるキラキラ光るなにかは少し進んだところで止まって、まるで呼んでいるみたいにフワフワ揺れている。
「ついていけば、いいのかな?」
細道を戻れば施設に帰れる可能性があると思うけど、もうちょっと外を歩きたい。
一度こうやって外に出たら、それなりに大きな建物だった施設も狭く感じてしまう不思議、である。