ひとりぼっちの転生幼女でしたが、最愛の家族ができました~実は神子だった私、ハイスペ兄から溺愛されつつ癒しの才能発揮します!~

 むむむと考えていると、自由時間が来た。

 私は記憶が戻ってから数日の間に、手に取れる本はすべて読み終えている。
 他の子にねだられるままに読み聞かせをしているけど、字が読めることについて騒がれることはない。この時間は先生たちの姿がないので自由にさせてもらっているよ。室内限定だけどね。

 この施設の子どもたちは皆、健康で元気いっぱいだ。絵本を読み聞かせているとすぐに寝てしまう。寝る子は育つって言うし、よきかなよきかなってやつだ。

 やんちゃ代表の十二番は、やっぱり落ち着きなく窓の外を見ていたりする。脱走防止として、子どもには届かない位置に鍵がついているから、外を見ているだけっぽい。
 読む本もないし、私もお昼寝しようかと思っていると、窓の外を見ていた十二番が近付いてきた。

「なぁ、しってるか? おまつり、あるんだぜ」

「おまちゅり?」

 お祭りといえば、前世で夏に行われていた神社のお祭りくらいしか思い浮かばない。
 そして十二番が情報通なのは、よく調理場でつまみ食いをしているからだ。
 厨房の料理人と仲よくなったのをいいことに、町の情報を色々と聞き出しているらしい。
 だいたいの場合先生に見つかり、罰としてデザート抜きになって涙目になっている十二番を何度も見たことがある。まったく懲りてないなぁなんて思っていたけど……。

「なんか、じんおうさま、くるんだって」

「じんおうしゃま?」

「お、おう……」

 いつも塩対応だった私が、突然食いついたことに気をよくしたのか、情報通な十二番は色々と教えてくれる。

 神話にも出てくる神王様とは、この世界を創造した神様だ。それなら見守ってくれているだけかと思いきや、人族のように知能を持つ種族を統治し、守護する役目も担っているとのこと。
 世界中を旅しながら、人々に直接手を差し伸べる神──それが神王様なのだ。

 その神王様が数十年ぶりに帰還されるので、国中がお祭り騒ぎになるらしい。
 私たちがいるこの施設は「神王様が最初に手がけた」という由緒正しきところだから、もしかしたら慰問に来てくれるかもと先生たちがソワソワしているとのことだ。

 神王様かぁ……見てみたいなぁ……でも幼女は外出できないし、難しいよね……。

 しょんぼりしている私を見て、十二番はニヤッと笑ってみせる。まだ小さいのにそんな悪い顔をするなんて、いったいどこの誰に影響されたのやら……。

「なぁ、じんおうさま、みたいか?」

「みたい!」

「あしたは、おとなたちが、すくない。ぬけだそうぜ」

「え、でも……」

 前世の私はいい子でいることを好んでいた。
 滅多に褒めてもらえなかったけど、怒られることはほとんどなかった。できるだけ静かに息を潜めて、大人たちの冷たい視線から逃げることに必死だったから。

 それでも。

 十二番みたいにイタズラして怒られても、泣いて謝って許してもらえる環境にいる子どもを見ると胸がチクリと痛む。

 たぶん、私は、十二番みたいな子どもを羨ましいと思っていたんだ。

「いこうぜ! ちょっとでて、すぐかえればいいんだ!」

「……うん!」

 流れ的に怒られる未来しか予想できない。でも、こういうワクワクすることを実行するのは初めてだ。
 顔いっぱい笑って頷いたら、十二番は顔を真っ赤にして、なぜか慌てて部屋の外に出ようとした。もちろん、すぐ先生に見つかり捕まっていたよ。

 早くも先行きが不安すぎる……。
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