一年だけの契約妻で、ほぼ放置されていたのに
「今度の金曜日の夜。俺の祖父、会長の誕生日パーティーなんです」
「金曜……」
「無理なら俺ひとりで行くから断ってくれていいので」
鷹士さんが間髪入れずに言う。私を連れていきたくないかのよう。でも、それができるからきっと私に話をせずひとりで行っているだろう。来週の金曜日だと普通に出勤だ。
「でも、夜なら行ける。この日は本社に研修があって。五時終わりだから、それからなら」
数ヶ月に一度のスタッフ研修がある。本社と同じ時間勤務だから、普段より早めに上がれるはず。私が言えば、鷹士さんの表情が緩んだ。
「助かります。パーティーと言いますが、ただ祝いの言葉を言えばすぐ帰るので」
「はい」
私に頼む時点で彼的に苦渋の決断を迫られていたのだろう。少しでも役に立てるなら嬉しい。私も笑顔になった。
と、ここまで私はただのお宅訪問だと思っていた。
当日、私が会社から出たところで鷹士さんの車に拾われて、連れてこられたのは銀座の某有名ブランド店。私は人形みたいにあれよあれよとスタッフにドレスを着させられ、アクセサリーを装着し、気づけばお会計も済んでいて、近くの美容室でヘアメイクされた。そして、また車に乗り込み、着いた先は高級ホテル。
エレベーターで宴会場のフロアまで行き、そこで事態を把握した。
これは……ドラマとかで見る、本物のパーティーだ。
家で開くような、いわば小学校の時に呼ばれたお誕生日会のイメージしか頭になかった。小学生から成長していない己の経験値に、痛恨の極みをとばかりに血の気が引いていく。
私、パーティーなんて初めてなんだけど!!
「口が半開きです」
動揺していたら隣から指摘が入り、慌てて口を閉じる。だらしない顔をしていては、着飾っても無意味だ。仕事みたいにキュッと頬に力を入れたら、鷹士さんが嘆息した。