一年だけの契約妻で、ほぼ放置されていたのに
そう言って初めて会う祖父は頭を下げた。それが政略結婚だった。母の実家、藤原家の事業は紡績。近年では業績が低迷していた。そこで、斎賀の会社からM&Aという形を申し入れられた。斎賀は総合商社でありながら、アパレル部門が赤字だった。そこで、紡績技術の長けた藤原を取り込み、黒字にしたい。ふたつがひとつとなって立て直すための繋がりを作る結婚。
私の旦那になる人は二社合わせたアパレル部門の統括部長に就任する予定だったが、藤原側に斎賀に取り込まれるのが気に食わない人間がいて反対も多かった。それなら身内になれば抵抗も少ないだろうということで私と結婚なんて信じられないけど、祖父曰く実際の政略結婚はそんなのらしい。
元々、斎賀家と藤原家の縁談は昔あった。その頃は藤原のほうが業績も良く会社も斎賀はまだ会社として小さかった。今となっては立場がすっかり逆転してしまった。
と小難しい事情をつらつら説明されたけれど、私には理解が追いつかないことばかり。でも、ひとつだけはっきりしていた。
「私にできることならします」
その場ですぐ祖父に返事をした。深く考えたら迷いが出る。それに母を助けられるかもしれない。祖父にとって斎賀がそうであるように、私にとってもこの話は天から垂らされた蜘蛛の糸だった。何としても掴まなければならない。
「ありがとう」
祖父は嬉しそうに眦を下げてから、また深く頭を下げた。その顔は世間でいう『優しいおじいちゃん』そのものだった。それが、会社のためだろうが孫に対する愛情だろうがどちらでもいい。ただ、現実問題お金が必要で、自分で用意するよりも即手に入り、母がすぐに治療を受けられる。それが一番重要だった。身売りと呼ばれようが、どうでもよかった。
私の旦那になる人は二社合わせたアパレル部門の統括部長に就任する予定だったが、藤原側に斎賀に取り込まれるのが気に食わない人間がいて反対も多かった。それなら身内になれば抵抗も少ないだろうということで私と結婚なんて信じられないけど、祖父曰く実際の政略結婚はそんなのらしい。
元々、斎賀家と藤原家の縁談は昔あった。その頃は藤原のほうが業績も良く会社も斎賀はまだ会社として小さかった。今となっては立場がすっかり逆転してしまった。
と小難しい事情をつらつら説明されたけれど、私には理解が追いつかないことばかり。でも、ひとつだけはっきりしていた。
「私にできることならします」
その場ですぐ祖父に返事をした。深く考えたら迷いが出る。それに母を助けられるかもしれない。祖父にとって斎賀がそうであるように、私にとってもこの話は天から垂らされた蜘蛛の糸だった。何としても掴まなければならない。
「ありがとう」
祖父は嬉しそうに眦を下げてから、また深く頭を下げた。その顔は世間でいう『優しいおじいちゃん』そのものだった。それが、会社のためだろうが孫に対する愛情だろうがどちらでもいい。ただ、現実問題お金が必要で、自分で用意するよりも即手に入り、母がすぐに治療を受けられる。それが一番重要だった。身売りと呼ばれようが、どうでもよかった。