一年だけの契約妻で、ほぼ放置されていたのに
「これじゃあ、忘れられないよ」
小さく零した言葉は眠る彼へと降っていく。
だけど、きっと彼は起きたら忘れている。だから、このキスはなかったことになる。でも、私だけは覚えておこう。そして、今だけ。内に隠し続けた恋心を少しだけ解き放ってあげたい。
私は寝ている鷹士さんの頬を撫でると、そこにお返しのキスをした。
***
「おはよう」
寝室からリビングに現れた彼は、白い顔をさらに白くさせていた。目覚めが悪いというより、酒が抜け切れていないのだろう。私は、キッチンで朝ごはんの支度をしていた手を止めた。
「あ、おはよう。大丈夫?二日酔いとか」
「あ……ああ、大丈夫。昨日は迷惑をかけてすまない」
「ううん、お酒に弱いとは知らなくて。私が近くにグラスを置いたままにしたのが悪かった。ごめんね」
「いや、俺の不注意だ。あと……」
「あと?」
「その、昨日玄関で、すまない」
「それはまぁ運ぶの大変だったよ。店から明里ちゃんも手伝ってくれたけど、部屋から私一人だとなかなか進まなくて」
「本当にごめん。どんなお詫びでもするんだが……俺が言っているのはそれとは別で……」
ごにょこにょと語尾を濁していく。気まずそうに泳ぐ視線と青白い頬が若干血色を取り戻す様にはっと息を呑む。
まさか覚えているってこと!?
一気に汗が吹き出して、顔に熱が集まってくるのに、わたわたと体の前で両手を振った。
「あ、あ、あれは事故みたいなもので!こっちこそすみません!私みたいな者が」
「いや、そんなことはない。俺のほうが悪い」
お互いが頭を下げて譲らない。何度かそのやり取りの後、彼はすっと顔を上げた。その真剣な眼差しを受けてパニックがピタッと止まり、私は中途半端に腰を折った体勢で固まる。
「ちゃんと責任を取る」
「へ?」
「あなたのことをちゃんとした形で迎えたい。契約ではなく、本当の妻として」
小さく零した言葉は眠る彼へと降っていく。
だけど、きっと彼は起きたら忘れている。だから、このキスはなかったことになる。でも、私だけは覚えておこう。そして、今だけ。内に隠し続けた恋心を少しだけ解き放ってあげたい。
私は寝ている鷹士さんの頬を撫でると、そこにお返しのキスをした。
***
「おはよう」
寝室からリビングに現れた彼は、白い顔をさらに白くさせていた。目覚めが悪いというより、酒が抜け切れていないのだろう。私は、キッチンで朝ごはんの支度をしていた手を止めた。
「あ、おはよう。大丈夫?二日酔いとか」
「あ……ああ、大丈夫。昨日は迷惑をかけてすまない」
「ううん、お酒に弱いとは知らなくて。私が近くにグラスを置いたままにしたのが悪かった。ごめんね」
「いや、俺の不注意だ。あと……」
「あと?」
「その、昨日玄関で、すまない」
「それはまぁ運ぶの大変だったよ。店から明里ちゃんも手伝ってくれたけど、部屋から私一人だとなかなか進まなくて」
「本当にごめん。どんなお詫びでもするんだが……俺が言っているのはそれとは別で……」
ごにょこにょと語尾を濁していく。気まずそうに泳ぐ視線と青白い頬が若干血色を取り戻す様にはっと息を呑む。
まさか覚えているってこと!?
一気に汗が吹き出して、顔に熱が集まってくるのに、わたわたと体の前で両手を振った。
「あ、あ、あれは事故みたいなもので!こっちこそすみません!私みたいな者が」
「いや、そんなことはない。俺のほうが悪い」
お互いが頭を下げて譲らない。何度かそのやり取りの後、彼はすっと顔を上げた。その真剣な眼差しを受けてパニックがピタッと止まり、私は中途半端に腰を折った体勢で固まる。
「ちゃんと責任を取る」
「へ?」
「あなたのことをちゃんとした形で迎えたい。契約ではなく、本当の妻として」