一年だけの契約妻で、ほぼ放置されていたのに
***
ふわふわとした心地から目を開ける。
薄暗い部屋の中、最低限のシンプルなデザインの家具がぼんやりと視界に映る。四方をぬいぐるみで囲まれた自分の部屋じゃない。でも、一度は見た光景。
彼のベッドの中から眠気眼を何度か瞬きして覚醒を促す。私の首の下には逞しい腕。そこから伸びる血管が浮いた手が見える。もう片方は私のウエストに回っていて、自分が抱き枕みたいになった状態だった。身動きに困ったけれど、腹部からそっと彼の腕ををどかし上半身を起こす。
隣の人はあどけない寝顔で枕に顔を半分薄めている。
「かわいい」
起きている時に言えば怒るだろうけど、今はぐっすり夢の中に入っている。
ベッドサイドの時計はまだ朝の六時だ。でも、今日はクリスマス商戦の最大関門、クリスマスイブ。明日にかけて気合を入れて臨まないといけない。一年で一番売れる時期なのだ。早めに用意しようと、私は起こさないようにそっと彼の頬にキスを落としてベッドから出た。
暖房をつけていても薄いキャミソールと下着だけで寝ていたから寒さで身震いする。昨日脱がされたパジャマを着て部屋から直結しているリビングに行く。冬の寒さが満ちる部屋にエアコンをつけて、朝ごはんを作ろうとキッチンに歩き出したら足に何かがぶつかった。
「あ」
ソファー横に置いたままにしていた彼の鞄。鞄の口が開いていて倒れた拍子にポータブル充電器やハンカチなどが出てしまう。
「しまった」
慌てて屈んでそれらを拾っていくとふと手が止まる。
「財布……」
シンプルな黒革の長財布。ブランド物に疎い私でも知っているロゴ。財布自体は使い込まれているけど、上質な革の光沢を放っている。
『機会があれば見てみたらいい』
パーティーの日にお義父さんに言われた言葉を思い出す。鞄へと仕舞いかけた手が止まった。
何が入っているんだろう……。
意味深な助言だった。私にとっていいことみたいな。それならば、今ちらっとだけ見て、すぐに戻しておけば……。
「いや、だめだ。さすがにだめ!」
「何がだめなんだ」
「ぎゃっ」
後ろから突然聞こえてきた声に私は驚きのあまり数センチ身体を浮かせた。振り返れば部屋着姿の鷹士さんが腰を折ってこちらを覗き込んでいて慌てて立ち上がる。
「あ、起こしちゃった!?」
「いや、ちょうど目が覚めた。身体は大丈夫か?」
するっと頬を撫でられて、その感触に昨日全身に受けた愛撫を思い出す。かぁっと熱がおなかの底から広がってきゅんと胸が高鳴った。
「え、あ、うん。平気」
「よかった」
鷹士さんは安堵の表情で軽く息を吐いた。そして改めて私の手に握られた財布へと視線送られてはっとする。まるでこれでは盗人みたいだ。あわあわとしながら財布を持ったまま手を振った。
ふわふわとした心地から目を開ける。
薄暗い部屋の中、最低限のシンプルなデザインの家具がぼんやりと視界に映る。四方をぬいぐるみで囲まれた自分の部屋じゃない。でも、一度は見た光景。
彼のベッドの中から眠気眼を何度か瞬きして覚醒を促す。私の首の下には逞しい腕。そこから伸びる血管が浮いた手が見える。もう片方は私のウエストに回っていて、自分が抱き枕みたいになった状態だった。身動きに困ったけれど、腹部からそっと彼の腕ををどかし上半身を起こす。
隣の人はあどけない寝顔で枕に顔を半分薄めている。
「かわいい」
起きている時に言えば怒るだろうけど、今はぐっすり夢の中に入っている。
ベッドサイドの時計はまだ朝の六時だ。でも、今日はクリスマス商戦の最大関門、クリスマスイブ。明日にかけて気合を入れて臨まないといけない。一年で一番売れる時期なのだ。早めに用意しようと、私は起こさないようにそっと彼の頬にキスを落としてベッドから出た。
暖房をつけていても薄いキャミソールと下着だけで寝ていたから寒さで身震いする。昨日脱がされたパジャマを着て部屋から直結しているリビングに行く。冬の寒さが満ちる部屋にエアコンをつけて、朝ごはんを作ろうとキッチンに歩き出したら足に何かがぶつかった。
「あ」
ソファー横に置いたままにしていた彼の鞄。鞄の口が開いていて倒れた拍子にポータブル充電器やハンカチなどが出てしまう。
「しまった」
慌てて屈んでそれらを拾っていくとふと手が止まる。
「財布……」
シンプルな黒革の長財布。ブランド物に疎い私でも知っているロゴ。財布自体は使い込まれているけど、上質な革の光沢を放っている。
『機会があれば見てみたらいい』
パーティーの日にお義父さんに言われた言葉を思い出す。鞄へと仕舞いかけた手が止まった。
何が入っているんだろう……。
意味深な助言だった。私にとっていいことみたいな。それならば、今ちらっとだけ見て、すぐに戻しておけば……。
「いや、だめだ。さすがにだめ!」
「何がだめなんだ」
「ぎゃっ」
後ろから突然聞こえてきた声に私は驚きのあまり数センチ身体を浮かせた。振り返れば部屋着姿の鷹士さんが腰を折ってこちらを覗き込んでいて慌てて立ち上がる。
「あ、起こしちゃった!?」
「いや、ちょうど目が覚めた。身体は大丈夫か?」
するっと頬を撫でられて、その感触に昨日全身に受けた愛撫を思い出す。かぁっと熱がおなかの底から広がってきゅんと胸が高鳴った。
「え、あ、うん。平気」
「よかった」
鷹士さんは安堵の表情で軽く息を吐いた。そして改めて私の手に握られた財布へと視線送られてはっとする。まるでこれでは盗人みたいだ。あわあわとしながら財布を持ったまま手を振った。