一年だけの契約妻で、ほぼ放置されていたのに
「いや、これはやましいことをしようとしていたわけじゃなく、足に鞄が当たって中から出てっ」
「わかってる。見てたから」
「え」
そんな前から見てたの?じゃあ私がキスしてベッドから出た時には起きてたんじゃない?と疑問が過ったけれど今は状況説明をしなければならない。
「実は財布の中身を見せてもらうといいってお義父さんに言われて」
「え……」
明らかに顔が強張る。普段ポーカーフェイスなのにこの反応は、絶対重要なものが隠されている。
私はダメ元で自分より頭一つ分以上に上にある瞳を窺うよう見上げた。
「だめ、かな?綺麗なお姉さんからもらった名刺とか、別に怒らないから。あ、やっぱり少し拗ねるかも」
「そんなものはない」
即答で返されてほっとする。財布を見ても私にとっていいことでないから可能性はないだろうと思っていても、やっぱり他の女性の影出てくるのは嫌だった。でも、さらに謎が深まるばかり。
じゃあ、何を隠してる?
はてと首を傾げていたら、鷹士さんが逡巡した後大きくため息をついた。
「見ていいよ」
「ほんと!?ありがと!」
仕方がないなと折れるように言われて、私は軽くジャンプした。一体何が隠されているのか。ドキドキしながら長財布を開ける。
開いた先にはクレジットカードや運転免許証などがカードポケットに入っている。
あとは紙幣が多く入っていてちょっとビビった。でも、何も変わったところはない。あとはコインポケットの部分。二つの紙幣入れの間にあるジッパーを開いていく。小銭とは別に仕切られたポケットにあったものに私は小さく息を呑んだ。
「折り鶴……」
「昔くれただろ?」
羽を閉じた状態で入っていた金色の折鶴から顔を上げる。照れを頬に滲ませた彼がいて、私まで顔が赤くなる。
「ずっと持っていてくれたの?」
「嬉しかったから」
恥ずかしそうに財布の中からそれを摘まみだす。
「『おう君が幸せになれるよう願いを込めた』って言ってくれたのが。あの時からお守り代わりに持ってた」
「私も……鷹士さんがくれた折り鶴持ってる。裁縫箱に入れて」
「そうか」
面映く微笑む彼に私はじんと胸が痺れた。私と同じに大切にしてくれていたことが嬉しくて。
お義父さんはこの折り鶴を言ってくれていたんだ。私と遊んだことを覚えている証拠として。
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