一年だけの契約妻で、ほぼ放置されていたのに
「じゃあ、結婚する時から私のこと覚えてたってこと?」
「そうじゃないと、お義母さんにいきなり挨拶に行ってない。というか、父とお義母さんはずっとやり取りしていたから。社会人になってからお義母さんには何度か会ってる」
「そ、そうなの?」
「ああ、つぐみは家を出て休日も働いているから来れないって聞いた」
確かに。私の仕事はシフト制。土日祝日がメインともいえる。母親から何度か食事に誘われてもなかなか予定が合わなくて断っていた。
おう君が来ると聞けば、意地でも……いや、仕事があると無理か。
ちょっと残念な気持ちになる。
それにしても、十年前に一度だけ会った私のこと覚えていてくれたなんて思いもしなかった。
「再会した時、あまりにそっけなかったから覚えてないのかと思った」
「逆に一度だけ幼い頃に遊んだ男が大人になって現れて馴れ馴れしくしてきたら恐怖だろ?実際、つぐみは事業に巻き込まれただけだ。だから、早く解放しようと思った」
「それで一年?」
「ああ」
「立て直せなかったらどうしてたの?」
「根拠なく事業計画を立てるわけじゃないから見通しはついていた。それでもイレギュラーは起こるから、無理になった場合はつぐみの意思で延長するか否かを問うつもりでいた。俺はこの結婚が嫌ではなかったから」
「そ、そうなの?」
「初恋の子だからな」
え!?という声も出なかった。信じられなさ過ぎて。だって、鷹士さんは歩けば道行く人が振り返る美貌の持ち主で、仕事もできて。子供の頃なんてビスクドールが動いているのかと思うくらい可愛くて。その人の初恋が……。
「わ、私?」
「そう」
「なんで?もっと可愛い子いたでしょうに」
「つぐみちゃんは十分可愛かったよ」
「つぐみ、ちゃん……」
「ふっ、照れてる」
「び、びっくりしただけ!」
鷹士さんにちゃん付けされると新鮮でなんだかそわそわしてしまう感じ。図星を突かれてムキになると鷹士さんは愛おしそうに目を細めた。
「だから、あなたが結婚相手と知った時はほっとした」
鷹士さんは手のひらの折鶴を柔和な眼差しで見つめる。
「あの時の俺は利益が出る相手なら政略結婚だろうがしていただろう。でも、つぐみなら信頼できると思った。腹の中を探り合うようなこともなく、斎賀の名前に目が眩むことなく、普通に俺を『俺』として扱ってくれると思った」
確かに、彼の出自を知れば目の色を変える人は多いだろう。それに見目も美しい。彼の中身を知る前に心を奪われる人もいる。私だって最初見た瞬間に惹きつけられたのだから、その人たちを偉そうに責められない。彼の優しい性格を知れば知るほど好きになったけれど、人によっては理想と違うと勝手に失望を投げたかもしれない。
「そうじゃないと、お義母さんにいきなり挨拶に行ってない。というか、父とお義母さんはずっとやり取りしていたから。社会人になってからお義母さんには何度か会ってる」
「そ、そうなの?」
「ああ、つぐみは家を出て休日も働いているから来れないって聞いた」
確かに。私の仕事はシフト制。土日祝日がメインともいえる。母親から何度か食事に誘われてもなかなか予定が合わなくて断っていた。
おう君が来ると聞けば、意地でも……いや、仕事があると無理か。
ちょっと残念な気持ちになる。
それにしても、十年前に一度だけ会った私のこと覚えていてくれたなんて思いもしなかった。
「再会した時、あまりにそっけなかったから覚えてないのかと思った」
「逆に一度だけ幼い頃に遊んだ男が大人になって現れて馴れ馴れしくしてきたら恐怖だろ?実際、つぐみは事業に巻き込まれただけだ。だから、早く解放しようと思った」
「それで一年?」
「ああ」
「立て直せなかったらどうしてたの?」
「根拠なく事業計画を立てるわけじゃないから見通しはついていた。それでもイレギュラーは起こるから、無理になった場合はつぐみの意思で延長するか否かを問うつもりでいた。俺はこの結婚が嫌ではなかったから」
「そ、そうなの?」
「初恋の子だからな」
え!?という声も出なかった。信じられなさ過ぎて。だって、鷹士さんは歩けば道行く人が振り返る美貌の持ち主で、仕事もできて。子供の頃なんてビスクドールが動いているのかと思うくらい可愛くて。その人の初恋が……。
「わ、私?」
「そう」
「なんで?もっと可愛い子いたでしょうに」
「つぐみちゃんは十分可愛かったよ」
「つぐみ、ちゃん……」
「ふっ、照れてる」
「び、びっくりしただけ!」
鷹士さんにちゃん付けされると新鮮でなんだかそわそわしてしまう感じ。図星を突かれてムキになると鷹士さんは愛おしそうに目を細めた。
「だから、あなたが結婚相手と知った時はほっとした」
鷹士さんは手のひらの折鶴を柔和な眼差しで見つめる。
「あの時の俺は利益が出る相手なら政略結婚だろうがしていただろう。でも、つぐみなら信頼できると思った。腹の中を探り合うようなこともなく、斎賀の名前に目が眩むことなく、普通に俺を『俺』として扱ってくれると思った」
確かに、彼の出自を知れば目の色を変える人は多いだろう。それに見目も美しい。彼の中身を知る前に心を奪われる人もいる。私だって最初見た瞬間に惹きつけられたのだから、その人たちを偉そうに責められない。彼の優しい性格を知れば知るほど好きになったけれど、人によっては理想と違うと勝手に失望を投げたかもしれない。