彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
 * * *

 翌朝。

「はい琴乃……食べさせてあげる」

 彼のせいで、身体がだるくて朝起きられなかった。ルームサービスを頼んで、彼が受け取り、ベッドの上に運んでくれた。

「玲さん。母のことですけど……別れたと言っていたのに、あなたとよりを戻したと知ったら、きっと……」

「そうだね。すぐには僕と会ってもらえないだろうから、手紙を書こうかと思ってる」

「手紙はいいかもしれません。確かに会うのはリスクが高いし、電話も出たくないと言いそうです」

「どちらにしても主治医の先生に相談が必要だ」

「私の方から先生に確認してみます」

「そうしてもらえると助かるよ。琴乃、ひとつ約束して」

「なんですか?」

「誰が何と言おうと、もう僕から逃げないこと」

「玲さん……」

「不安があるなら僕に話すこと。黙って逃げるのはやめてくれ」

「本当にごめんなさい。もうしないわ」

「君は昔からひとりで何でも抱えすぎだ」

「そうですね。わかってはいるんです」

「そのことで君を責める気はない。側にいてやれなかった僕も悪いんだ」

 彼の肩にもたれかかる。玲さんは私の肩を抱き寄せた。

「私、側に玲さんがいると安心できる。もう大丈夫、ひとりじゃないんですよね?」

「その通り。これからは側にいるよ。そのためにも僕と一緒に暮らせるよう、周りを説き伏せるのが先だ」

「でも……」
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