彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
「今まで、君はお母さんのために僕のことをわざと話さなかったし、僕も遠慮して挨拶を控えていた。でもそれが僕らの人生において受け入れられないなら、向き合う必要がある」

「玲さん……」

「いくら僕があの時のことを釈明してお母さんの誤解を解いたとしても、琴乃の本当の気持ちをお母さんに伝えないとだめだよ。僕の一方通行だ。二人で説得しないとだめなんだよ」

 確かにその通りだ。ずっとお母さんの為に彼の話題を避けてきた。

 それなのに、誤った記事を訂正する前にお母さんの発作が起きて、私はとうとう絶望して彼から逃げた。

 今ならわかる。玲さんの言う通り、本当の気持ちを伝えて向き合わないとだめだ。

 私は彼を愛しているし、別れても忘れることが出来なかった。

 彼以上の人が現れるとは思えないし、あのままだったら一生ひとりだっただろう。

 本当の自分を取り戻すため、勇気をだそうと決めた。

 * * *

 ふたりで主治医の先生に面会した。

 先生は事情を聞いてとても同情してくれた。最初に発作を起こしてからの状況を聞いていて、私も病気になるんじゃないかと心配していたと言われてしまった。

 この病気は家族も巻き込んで、看病している人も心の病になることがあるそうだ。

 結局、家族の治療もしていることが多いと悲し気に言われた。

 だからこそ、私が我慢して病気にならないよう、お母さんが私たちの話に向き合うための準備を先生がしてくださることになった。

 彼が手紙を渡す前に、私の気持ちを正直にお母さんに話したほうがいいと言われた。

 腫物を扱うようにお母さんを優先して、自分の人生から逃げたらいけないと言ってくださった。

 お母さんに手紙を見せる前に、私から玲さんの話を切り出した。
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