彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
「琴乃には絶対これだ」

「ちょっと子供っぽくありませんか?私はこれがいいと思うんですけど……」

「これは胸が開きすぎだ。絶対却下」

「玲さんが選んだこんな大きなリボンのついたドレスだって却下します」

 ふたりで口をとがらしている私達を見て笑っていた店員は、口を開いた。

「藤堂様のスーツに合わせたらどうでしょう?この間おっしゃっていたものでよろしかったんですよね?」

「そうだね」

「それならそちらのお客様には同じ紺系で背中にレースの刺繍が入ったシースルーのロングドレスなんていかがでしょう?胸元は背中ほど開いてないですが、少し大ぶりのこちらのネックレスをつけるとちょうどいいラウンドネックかと思います」

 店員はそのドレスを見せてくれた。とても大人っぽい雰囲気で上品だ。背中が少し心配だった。

「素敵だけど、私が着て大丈夫かしら」

「刺繍が入っているので、透けてすべてが完全に見えたりしません。とても素敵なんですよ。試しに一度試着なさったらいかがでしょうか?」

「そうだね。着てみたら?」

「こちらにどうぞ」

 店員に促されて試着室へ入った。

「時間があまりございませんので、このドレスに合う小物を選んできます。お客様の様子をご確認くださいませ」

 玲さんの声がする。

「琴乃どう?」

「後ろのホックが届かないの……店員さんを呼んでください」

 すると、彼がカーテンの隙間からするりと入ってきた。鏡に彼が映っている。

「きゃあ、何してるんですか!」

「お客様、私がお手伝い致しましょう」
< 119 / 131 >

この作品をシェア

pagetop