彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
「?」

 私は顔をあげて彼を見た。彼が私をじっと見てる。見たことのないような目。食べられてしまいそうだった。

「……と、藤堂さん?」

「三日間、君と付き合ったお礼に君のこと名前で呼んでもいい?君も僕のことは名前で呼ぶこと。イギリスじゃあ、ファーストネーム呼びは普通だからね」

「あ、あの……」

「だめなの?」

 彼の眼が揺れている。その気になったらだめだ。私は目を反らした。

「ねえ……琴乃、だめ?」

 彼の色気が駄々洩れしている。どうしよう、どうしたら……こういう経験がないから私は固まった。

 彼の顔が近づいてきた。彼の私の手にあるシャンパンをすっととりあげて、静かにテーブルへおいた。

「ほら、呼んで」

「……さん」

「ん?聞こえない」

「れい、さ……」

 最後の文字は彼の唇に消された。ぐっと引き寄せられてキスされた。

「ん……」

 彼は少し唇を離すとささやいた。

「琴乃かわいい……好きだよ」

 そしてまた唇を塞いだ。舌でノックする。

「え、……あ……」

 驚いて口を少し開けた瞬間彼が中に入ってきた。お腹がきゅんとなる。膝からガクンと落ちそうになった私を彼が抱きしめた。耳元で彼が囁く。
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