彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
 起き上がるときに腰が重かった。大丈夫ってどの程度のことを言うのかわからなかったから大丈夫と言ってしまった。

「初めてだって言うから気にしてたのに、琴乃が煽るからやりすぎた」

「煽ってなんかいません!」

「煽っただろう?僕なら痛くてもいいとか言った」

「……!」

「可愛い。真っ赤だ。何時の便だっけ?」

「14:30です」

「まだ、朝の5時だから……」

「あの、シャワーをお借りしても?」

 お化粧も落としていない。ドロドロだし、入りたかった。

「わかった。でもあと一時間だけつきあって……」

「玲さん……」

「今度は最高に優しくする。一回だけだからね」

 彼は私に軽く口づけると、私を抱いたまま布団にもぐった。

 その後、シャワーを借りた。 

 彼は鼻歌を唄いながらキッチンで軽い朝食を作っている。彼は眠った私を残して、夕べのうちにシャワーを浴びていた。

「琴乃、着替えをここにおいておくからね」

「ありがとうございます」

 シャワーから出ると、そこにはレモンイエローのリバティプリントのワンピースが置いてあった。びっくりした。

「これ!え?!どうして……玲さん!」

「ずっとこれを見ていたよね。だから僕からプレゼントすることにしたんだ」
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