彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
「謝られた……それで本社に報告して、本部長の庶務は今後高木君に頼んでみるって言ってたけど……うまくいくかな?」

「高木さんはわめくでしょうけど、本社に報告となれば本部長は頷くんじゃないですか。本部長ってあんなんで本社の偉い人の息子なんて気持ち悪すぎです。本社も子会社にあんなセクハラ男押し付けるなんて信じられない」

 確かに……。

「それにしても、我慢ばっかりしている蔵原さんが、事ここに至ってとうとう申告したのはどうしてなんですか?」

 不思議そうに彼女が眼鏡の中の目を瞬かせた。

「実はさっきホテルで……またセクハラされかけてね……」

「ええー!大丈夫だったんですか?」

「あ、うん。とりあえず大丈夫だった」

「よかった……私のいないところでやるなんてわざとですね。蔵原さん走って逃げたとか?とうとう蹴ったんですか?私なら一発KOですよ」

 田村さんが蹴りマネをする。彼女はタイトスカートが破れるかと思うくらい足があがった。

「実は近くにいた人が本部長を私から引き離して連れて行ってくれたの。そうしたら声をかけてくれた女性がいてね、その人が本部長は常習犯だろうから、きちんと上へ訴えろって言ってくれたんだ。その女性、助けてくれた男性の上司だって言ってた」

「へええ……すごい、女性が上司だったんですか?すごい会社なんですね」

「そうだね。どこの会社の人だったんだろう……とにかくお礼も言えなかったけど、私それでね、今回は絶対言うって決めたの」

「よかったですよ。会社をやめさせられないように我慢するって蔵原さんいつも言ってたでしょ?弟さんのことやお母さんのこともありますけど、それにしたって許せる範囲を超えてます。周りの連中だって気づいていてしらんふり。最低の会社……」

 私は彼女の口を抑えた。

「落ち着いて……とにかく、来週の私と同じ休みの時期に本部長も出張だし、休み明けから担当代わってもらう予定だから、これからは田沼さんの仕事も少しは手伝えるようになると思う」

「やったー!うわわ、嬉しい!とりあえずは税関の書類、一緒に作ってもらってもいいですか?」

「もちろんよ」

 彼女の隣に座り、一緒に仕事を始めた。
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