彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
「あ、お兄ちゃん、切らないで。私が代わりに琴乃さんと話すから、とっととお母さんの所へ行って!」

「は?」

「え?」

『玲ってば、早くして!』

 お母様の声が怒りを含んだ。

「母さんわかったから!今行くよ!……琴乃ごめん。切っていいぞ」

 里香さんがしっしっと玲さんを追い払った。正面に里香さんが座る。

「琴乃さん、お兄ちゃんとはどのくらい付き合っているんですか?」

「イギリスに旅行へ行った九月からです」

「お仕事は何してるんですか?」

「貿易事務です」

「普通の会社ですか?あ、ちなみに私は公務員です」

「私は商社の子会社なんです」

「ふーん。えっと、お兄ちゃんはイギリス暮らしだし、ほとんど会えなくて寂しくないんですか?」

「寂しいですけど、ほとんど毎日連絡をくれます」

「時差があるのに?ふーん、仲いいんですね。それとも、会えないと結局相手は何してるのか隠していてもわかんないから、喧嘩しないのかもしれないですよね。そうか、会わないのもうまくいかせる手なのかもしれない。引いてみる、か……」

「はあ……?」

 何がいいたいの?よくわからない。もしかして私達を喧嘩させたいのかな?

「でも、だからってあんまり油断しないほうがいいと思いますよ」

「え?」
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