彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
「ここだけの話ですけど、女優の原口日奈さんは元カノです。もしかするとよりを戻すかもしれないですよ。日奈さんがめっちゃお兄ちゃんのこと好きで……いやこれ以上言うと怒られる。お兄ちゃんには話したこと内緒にしてくださいね。でも、今のところはお兄ちゃん、琴乃さん一筋らしいから大丈夫かもしれないですけど……日奈さん本気らしいから念のため教えてあげました」

 そういえば、ハロッズで会った彼の上司が確か日奈さんって言っていた。原口日奈……最近海外の映画に出たり、美人で有名な女優さんだ。元カノだったの?私は驚いて何も言えなかった。

 女優が元カノ。普通なら驚くところだけど、玲さんならありうると思ってしまった。

 そこに血相変えた玲さんが戻ってきた。

「こら、里香。何を話してるんだ。いい加減にしろ。早く出ていけ」

「じゃあね、琴乃さん。さよーなら」

 目の前で手を振っている。訳が分からない。私も手を振りながら頭を下げた。

「ごめん、何か言われた?」

「……大丈夫。元気な妹さんだね」

 私は内心の驚きを隠すように、笑顔で彼に言った。

「ちょっとシスコン気味でね。親も甘やかすからとんでもない奴になっちゃって……」

「そんなことないでしょ。明るくて楽しくていいね」

 里香さんは内緒にしてと言っていた。それに、彼を信じてる。聞けば昔のことだと絶対言ってくれると思う。

 それに近いうち彼と会える。不安ならその時聞けばいいと思った。
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