彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
「あ、うん。大体ね……昨日までほとんど準備して入れてあったから、あとは日用品だけなの」

「姉ちゃん、嬉しそうだな。ずっとイギリスにもう一度行きたいって言ってたもんな。ゆっくり楽しんできて」

「ありがとう。でもあの様子じゃちょっと心配」

「お母さんも海外旅行にそこまで反対しなくてもいいのにな。行った人がみんな事故に遭うわけじゃないのに……心配しすぎなんだよ」

「しょうがないよ。あんまり刺激するとまた発作を起こすかもしれないし……」

「来年からは僕が全寮制の高校に入るから、姉さんに母さんのことは全部丸投げになるな」

「そんなこと心配しないでいいのよ。高校の学費全額無料になったのは弦也が頑張ってくれたからじゃない。バスケが好きなら頑張ればいいけど、怪我だけは気を付けてね」

 弦也はバスケが得意で、有名な私立の高校からスカウトされた。

 全寮制なので、お母さんの面倒は私がひとりでみることになる。

「じゃあ、僕はバッシュいれたら風呂入って先に寝るから。朝は僕のほうが早いからね」

「うん。お母さんのことで何かあったらおばさんに来てもらうことになってるからよろしくね」

「わかった」

 母には妹がひとりいる。私達のおばさんだが、たまに母を心配して家へ顔を出してくれる。

 今回は私が海外に行くし、弦也も合宿。

 母のことをお願いしたのだ。
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