彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
「どうして……御存じなんですか？」

「玲にあなたのご家族と交際のこと話したのかと聞いたら、言葉を詰まらせたから里香ちゃんに聞いたの。お母様に反対されているんですってね。玲の両親や里香ちゃんは昔からオープンでうちの家族も知り合いよ。交際は家族が皆、応援してくれてるの」

　つまり、彼のご家族も玲さんと日奈さんにつきあってほしいと思っているのね。

「こんな記事が出てしまって、あなたの存在を知っているから一度お目にかかってお話するべきだと思ったの。でも、それだけではなく、私の気持ちもお伝えしておく方がいいと思ったんです」

「お話はわかりました」

「玲から連絡が来てないなら、どうするかよく考えてほしいの。あとこれ……よかったら使ってください。私がCMをつとめている化粧品。あと色紙にサインも入れました」

「ありがとうございます……この化粧品いいですよね。友達も使っています」

「そう？喜んでもらえたなら嬉しいわ。連絡をくれたらまたサンプルも贈るわ」

「……それでは失礼します」

「気を付けてね。あ、このケーキも持って帰って」

　マネージャーが呼ばれて口をつけていないケーキを彼女の分も箱に詰めてくれた。マネージャーが私を庇うようにして外へ誘導してくれた。通りに出ると、マネージャーが言った。

「蔵原さん。遠くまで今日はありがとうございました。今日のことは部外者に口外しないでください。よろしくお願いします」

「わかりました」

「藤堂さんの助けがあって、日奈の国際派女優への躍進があります。藤堂さんは一週間前から国際会議に入っていて、外部と連絡が取れない状況のようです。記事のことは外務省も知っていて、わざと彼を守っています。どうぞご理解下さい」

　私はマネージャーの言葉を聞いて、彼から連絡のない理由がようやく分かった。

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