彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
 だが、僕の仕事と絡むことが増えてしまい、正直迷惑している。

 お礼だと言って事務所が食事をセッティングし、上司も最初は同席、最後はふたりにされてしまうのだ。昔交際していたというのが噂となり、日奈の態度から勘違いされている。

 はっきり断ったが、今の交際相手が一般人だと知るや否や、日奈とつきあうほうが国益にもなるし、君の為だと言い出した。

 何を言われようと、もうすぐ日本へ帰国するし、彼女の仕事とは無関係になる。僕はあと少しの辛抱だと思っていた。

 フランスの会議は三日間。会場のホテルへ各国缶詰になって会議があった。会議中はどの国の外交官も外と連絡はほとんどとれなかった。

 日本とは時差もあり、昼夜逆だ。日本の担当者は僕に同道してホテル入りしていた。

 毎日の各国との協議に向けて、日本の担当者と決めなければならないことや、他国の関係者と事前協議もあり、寝る間も惜しんで働いた。忙しい一週間だった。

 最終日、フランスの担当者からおめでとうと声をかけられた。何がと聞くと、日奈がカンヌで女優賞に決まったと言われて驚いた。

 その後、ようやくプライベートの携帯を確認した。想像以上にすごい数のメールが来ていた。知り合いにはこの時期電話はできないと伝えてあったので、緊急時は外務省に連絡するように伝えていた。

 両親から落ち着いたら電話をくれと連絡が来ていた。

 琴乃からも着信があった。

 同期の達也からメールが来ていて、見て驚いた。日奈の記事が添付されていた。僕と日奈が映っている。しかも彼女が僕の顔を見ながら腕を取っているのだ。

 血の気が引いた。これは、二年前の空港の写真?

『カンヌ女優賞の原口日奈。外交官の元交際相手と結婚秒読みか』

 驚きすぎて手が震えた。記事を見てから、その下にある達也の文章をようやく読んだ。

 『藤堂、大丈夫か?日本ではイニシャルで隠れているお前の身元捜しが始まってる。彼女とつきあうことはないって言ってたのに、嘘だったとかないよな?本庁じゃ、ほとんどの人が彼女の言う交際相手がお前だとばれてきてる。とりあえず、できる限り口留めするよう手配しておくよ』
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