彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
 僕は受け入れがたく、交際相手を安心させるためにも帰国して結婚したいと参事官に伝えた。そして、夜の電話で、琴乃にもその気持ちを告げた。反応が思っていたのと違い不安になった。

 翌日、彼女に別れを告げられた。そして、大使に呼び出された。

 本庁の判断で、僕の日本異動は正式に取り消された。

 予定より半年から一年程度は、国内状況を見て遅らせると本庁から正式通達が来たと言われた。日本での映画のプロモーションがこれから始まる日奈。日本に僕が戻ると噂になり身バレする可能性が高いと言われた。

 外務省としては僕と組織を守るためにもこの判断しかなかったのだ。

 本当に目の前が真っ暗になった。ショックだった。

 僕は琴乃と連絡が取れなくなり、とうとう弟の弦也君に連絡をした。

「姉さんの決断は正しい。あの記事が出る前にどうして姉さんへ連絡しなかったんです?それどころか、記事が出て数日、いくら仕事があったとしたって姉さんをそのままにしておくなんて……男として大事な女を守りもしないなんて最低です」

「それは、他の国へ国際会議に出ていたから……いや、いいわけだな。実は記事が出ることも知らなかった。おそらく、イギリス外務省に連絡が来ていたのだろうが、出張中の僕の仕事に支障が出る可能性を考えて伏せていたらしい」

「そうだとしても、日本でどれだけ騒ぎになっていたと思うんです?ワイドショーにも画像が出ていて、あなただって母さんも気づいたんですよ」

 僕は頭の後ろからハンマーで殴られたような痛みがあった。大事なことを失念していたことに気づいた。

「……もしかして、お母さんに何かあった?」

「テレビを見てあなたに気づいた母さんは、姉さんが裏切られたと気づいて、大きな発作を起こしました。危なかったんです。それ以降身体の具合も悪くなって入院している。全部玲さんのせいです」

「それは本当か?!琴乃は何も教えてくれなかった。知らなったんだ。いや、本当に申し訳ない。お母さんは大丈夫なのか?」

「ええ。それに、姉さんが玲さんと別れたので、母はようやく安心しました。だからいつか元気になります。そういえばいつ帰国するんですか?」

「僕の日本帰国は、あの記事のせいで半年から一年程度伸びたんだ。まだしばらくイギリス勤務になった」

「そうですか。それはよかった。お互いのためです。言っておきますが、仕事で帰国しても、戻ったとしても、絶対姉さんと連絡を取ろうとしないでください。何かしたら僕はあなたを一生許さない」

「弦也君!」
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