彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
「お兄ちゃん。ごめんね」

「何が?」

「言ってなかったけど、記事が出てすぐに日奈さんから連絡があって、琴乃さんのアドレス教えたの。あ、もちろん、琴乃さんに事前教えていいかどうかも聞いたんだよ。そうしたらいいって言われたの」

「なんだと?」

「ごめん。だって日奈さんが、お兄ちゃんが琴乃さんのアドレスを教えてくれなくて、琴乃さんに迷惑かけたからどうしても自分で直接謝りたいって言うからさ。記事が出て二日目には彼女と会って話せた、ありがとうって日奈さんから連絡があったんだ」

 驚いた、まさかそんなことがあったとは思わなかった。

「お兄ちゃん、出張中で連絡取れなかった頃だったから、本当にタイミング悪かったよね。琴乃さんはお兄ちゃんのこと信じてるって言ってたけど、今思えば、日奈さんに会って何か言われたかもしれない。ごめんね」

 どうしてそのことを教えてくれなかったんだろう。日奈が元カノだと教えていなかったことも、謝ったが琴乃は何も言わなかった。全部自分一人で抱えていたんだな。僕は別れを選んだ彼女の理由が徐々にわかってきた。

「そう、だったのか……実は、ワイドショーで芸能ニュースを見た琴乃のお母さんが、ショックで発作を起こして入院したんだ」

「え?!」

「彼女のお母さんには二度ほど会っている。僕だと気づいたんだろう。誤解させたんだ」

「そうだったんだ。お兄ちゃん……実はね、琴乃さんからお兄ちゃんと別れてしばらくしてから今までありがとうってメールが来て、その後連絡が取れなくなったの。私のアドレスも消されたんだと思う」

「ようやく色々わかってきた。実は日本に帰国が決まった。来月だ。戻ったら彼女に会って謝罪してゆっくり話をするつもりだ」

「連絡取れるの?」

「いや、なんとしてでも探し出す。家も、勤め先もよく知ってる。いずれ会える」

 連絡がとれなくなり、すぐに自宅へ手紙を送ったが、転居しているということがわかった。

 どこかに転送されているようだが、住所はわからなかった。携帯を変えられたようで、電話番号もわからなくなった。彼女の拒絶の意思を見たようで本当にショックだった。

 だが、琴乃を知っている僕は彼女が僕のために別れた可能性もあると思っていた。

 その気持ちは日奈が彼女と会ったと聞いて強まった。琴乃に確認すべきことがたくさんある。顔を見て、側で彼女と話をするまでは僕を止めることは誰にもできないだろう。

 
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