彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
「実は迷ってるの……私のいる場所がわかるからやりたくなかったんだけど、出演報酬が別途出るらしくて、結構いいボーナスになるの」

 ボーナスがほとんどない今の私には夢のような話だった。

「もうあれから一年になるんだろう?あっちが探すつもりならどんな手段を使ってでも見つけにきただろうから、諦めたんじゃないか?」

「そうかもしれない。もう別なお相手がいる可能性もあるわ」

「それなら隠れることはないんじゃないか?お金になるんだろうし、君のためにもなる。大体、蔵原は美人だし、広報の思惑は見えてる」

「なによ失礼ね。私は教師なんだから中身で勝負よ。授業が認められたんじゃないの?」

「いや、もちろんそうだろう。変な授業だったら誰も頼まないよ。君の授業、いつもいっぱいらしいじゃないか」

「おかげさまで、最近は授業の予約が取れないと学生から言われることもあるくらいなの。認められたみたいで実は少し嬉しい。でも優秀な学生の質問も授業中多くなって、私はその分勉強しなくちゃいけないから実は大変」

「そうか。転職して良かった?やりがいが見つかったみたいで嬉しいよ」

「うん、ありがとう。挑戦してみる」

 つい嬉しくて佐田君に向ってほほ笑んだ。

「……」

「どうしたの?」

「その笑顔がこうやって真近で見られるのは本当にいいな」

「もう、何言ってんのよ」

 少し遅れて出てきたランチを時計を見ながらふたりで急いで食べ始めた。
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