彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
 私は玲さんが好きで、彼も私と遠距離でよければつきあってくれないかと言ってくれた後だったのだ。うまくいくかはわからなかったけど、その時は彼しか考えられなかった。

 私は頷いた。

「だったら、今回は諦めないぞ。お前の近くにいてお前を守る」

「佐田君……」

「転職に協力したり、変な電話を繋がないようにしたのは俺だぞ。まさか、逃げたりしないよな」

「佐田君には本当に感謝してるよ。気持ちに応えられなかったのに、甘えてしまって本当にごめんなさい」

「謝るなよ。そんなこと言わせたいわけじゃないんだよ。なあ、蔵原にとって俺って今やただの友人から親友にステップアップしたと思うんだ」

 目の前の得意げな顔を見ておかしかった。でも、確かに彼の言う通りかもしれない。

「そうだね……もはやただの友人ではない、親友に近いかもしれないね」

 佐田君はスポーツマンらしくてさっぱりしたいい人。おつきあいを断ったのに、塾で再会したとき彼の私へのさっぱりした態度はどこも変わらなくて、それがどれだけ嬉しかったかわからない。

 そんな人だとわかっていたから、つい頼りすぎて勘違いさせてしまったのかもしれないと思った。

「何でも一人で抱え込もうとするなよ。これからも遠慮なく俺様に相談しろよ。俺はいつでも親友から次へステップアップする準備はできてる。ま、のんびり行くから、お前は今までみたいに普段通りでいてくれていいからな」

「親友で十分だよ……いつもありがとう」

 胸を張って言う彼に笑ってしまった。本当にいい人だ。でも申し訳ないが、彼は私の恋愛対象にはならないとわかっていた。

 彼だけではない。私にとって彼を超える人は現れないとわかっていた。忘れると言いながら、今でも彼のことを想っている。

「そうだ、相談したいことがあったの」

「早速なんだ?親友になんでも聞いてくれ」

「実は、広報から連絡があったの。予備校のモデル授業をSNSで流すことになって、私にやってくれないかと相談されたのよ」

「ああ、各教科何人か話が来てるみたいだな。残念ながら現代文の担当は俺じゃなかったけどね」
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