江戸JK

18

@医療所

朋菜は松前と友樹によって、診察室に運ばれた。

「どうされましたか?」

朋菜は医者の顔を見た瞬間ゾッとした。その医者は顔がものすごくただれていたのだ。

「……!」

「お嬢さん、俺はこんな顔してるけど、全然悪い奴じゃないよ」

その医者は親切に朋菜のけがを手当てしてくれたが、颯はどこか落ち着かない様子だった。

「颯?私の足はもう治ったよ?」

「いや、そうじゃなくて……。この医者、医者なのに顔がただれているなんて変です」

友樹が口をはさんだ。

「確かにそうだな……。朋菜、何か気づかないか?」

朋菜が答える前に、別の医者が来た。

「この方、本名は高野長英ですよ」

「高野長英……。あ、思い出した。『戊戌夢物語』の著者だよな?颯」

「友樹様正解です。おそらく彼は逃げてきて、ここで医者として働いているのでしょう。『戊戌夢物語』も、幕府を批判しているとして、『慎機論』を著した渡辺崋山と共に処罰されます」

「それを蛮社の獄というのよね?」

「その通りです、朋菜様」
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