落ちこぼれ令嬢は2度目の人生で最強の魔獣使いを目指す

第1話

1度死んだ者が別の存在となり、生まれ変わることを“転生”と呼ぶ。




今の私は6歳。この歳にしては品があり、大人びた容姿である。きっとどこかの家の令嬢なのだろう。とても滑らかで光沢のあるシルクのドレスを身に着けている。

だが、ある日唐突に思い出したのだ。
本当の私──前世のことを。

本当の私は夜聖 珠李(よるみ しゅり)。16歳なのだ。
しかも、今の私とは違って、落ちこぼれ令嬢だった。社交界でも私は地味で注目されず、両親から早く婚約相手を見つけろと言われても、何も結果を出せず、両親に心配や迷惑をかけ続けていた。

そんな私が淑女の名に相応しい令嬢になるとは、過労で倒れ、夢でも見ているのか。
それとも、過労死し、“転生”をしてしまったのだろうか……




前世のことを思い出す3日前のこと。私はとある森にいた。



私は魔獣使い(・・・・)と言い、この世界に人間と共に混在している魔獣を手懐け、魔獣使いも“魔法”を唱え、我々人間社会に危害を及ぼす魔物を倒す仕事をしているのだ。

そうは言っても、私はまだ見習い。技も半端で、魔獣を完全に手懐けていたとしても、1人で魔物と対峙することは危険だ。

一人前になるには15歳を越えなければならなかった。私は将来、最強の魔獣使いになるため、師匠の仕事の合間に修行を受けさせてもらっていた。


そんなある日、私はとある森で師匠とはぐれてしまったのだ。
1人彷徨っていると、魔物に目をつけられてしまった。

私は手懐けた魔獣を召喚し、先制攻撃をするもダメージには及ばない。試しに師匠から教わった魔法を唱えてみる。

百雷の矛(ケントゥムトニトルス)

そう唱えると、100個もの雷が魔物を襲う。
魔物は麻痺状態に陥るも、レベルが高いため、攻撃の威力はあまり下がらない。
それからも攻撃は続けたが、とうとう私の魔獣が力尽き、瀕死状態になってしまった。残されるは私のみ。一対一の勝負が始まる──!!

炎の竜巻(フランマトゥルボー)

竜巻のような炎が魔物の体を包み込む。その時、魔物の目が赤く光る。

っ!?
ま、まずいわ!!
赤く光ると今の私のレベルじゃ倒せない…!
どうしよう…?
一か八かで魔物と同時に攻撃するしかないみたいね。
そうすると、もし魔物を倒せたとしても、私も一緒に死ぬ──!

覚悟を決め、今の私のレベルで1番強い魔法を唱える。

白蓮の雷槍(トニトルスハスタ)

槍状となった雷が魔物の体を貫く。それと同時に私の体を青い炎が包む。そこで、私の意識は途絶えた。
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