茨の冠は恋を知る



「もし、ユリウス殿下の正統性に傷があるとすれば……」

「王家の血筋。それに関わる何かが、暴かれるということかしら」

 

 リシェルの言葉に、カイルは一度、瞳を伏せた。
 そして、慎重に言葉を選ぶ。

 

「……君には、まだ話していなかったことがある」
「兄……ユリウスの出生には、“秘密”がある」

「秘密……?」

「兄の母は、王妃ではない。……先王時代に、王の側室だった女性だ」

「でも……記録では、兄は王妃の嫡子と」

「表向きは、王妃の子として育てられた。
 だが、本当は──父上が彼を“王妃の子”に仕立てたんだ。
 後ろ盾の強い王妃の派閥をまとめるために」

 

 それは、王家にとっては最大のタブーだった。
 つまり、**ユリウスは王位継承権を持たない“偽りの王子”**なのだ。

 

「その証拠があるの?」

「ある。……そして、彼もそれを隠すために動いている」
「今回の婚約発表をきっかけに、“俺が継承権を狙っている”と騒ぎ立てるはずだ。
 王座にしがみつくために、どんな手段も取るだろう」

 

 リシェルは静かに息を飲んだ。
 これまでの毒や陰謀も、全て“正統性”を奪われることへの恐れから来たものだったのだ。



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