茨の冠は恋を知る




 会場には、仮面をつけた貴族たちが集っていた。
 金と銀、翡翠と瑠璃。目にも鮮やかな色彩が舞うなか、
 リシェルは深紅の蝶の仮面を纏って現れた。

 

「──なんて美しい……」
「まるで夜に舞う、薔薇の精だわ」
「第二王子殿下の隣が、これほど映えるとは」

 

 仮面を通しても彼女の存在感は圧倒的だった。
 その横に立つのは、漆黒の仮面と銀の礼服を纏ったカイル。

 

「お前、他人を黙らせることに長けているな」

 

 仮面越しに囁かれた彼の言葉に、リシェルは静かに答える。

 

「殿下こそ、氷のごとき眼差しで心臓を凍らせる技に長けていらっしゃるわ」

「誉め言葉として受け取っておこう」

 

 たわいもないやり取り。
 けれど、仮面越しだからこそ交わせる本音があった。



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