【完結】バツイチですが、恋人のフリをお願いした年下イケメンくんからアプローチされて困ってます!


「眞紀人くんっ……!」

 打ち合わせを終えて病院へと到着した私は、急いで眞紀人くんの元へと向かった。

「眞紀人くん……お父さんは?」

 眞紀人くんの表情は少し暗くて、そして辛そうだった。

「……亡くなった」

 私は「そっか……」と眞紀人くんの隣に座り込んだ。

「父さんの最期、いい顔してた」
  
 眞紀人くんがそう話すから、私は「そっか」とだけ呟く。

「残念だな……父さんに菫花さんの手料理、一度でいいから食べてほしかった」

 私は何も言わず、眞紀人くんの手をギュっと握りしめる。

「……俺、父さんに何も出来なかった」

「え……?」

「父さんに出来ること、もっとあったと思うんだけど……何にも出来なかった」

 私は眞紀人くんを横から抱きしめると「そんなことないよ。……眞紀人くんは、ちゃんとお父さんのために出来ることをやったと思うよ、最後まで」と告げた。

「眞紀人くんは、親不孝な息子なんかじゃない。ちゃんと、お父さんのそばにいたじゃない。……最後の最後まで、ちゃんとお父さんの最期を見届けた。それはちゃんとした親孝行だよ」

 眞紀人くんは顔を俯くと、唇を噛み締めると私に身体を預けてくる。 
 でも眞紀人くんはきっと、我慢していたんだと思う。抱きしめた眞紀人くんの身体は震えていて、まるで子供みたいだった。

「……泣いてもいいよ、眞紀人くん」

 そのために私がいるんだから、頼っていいんだよ。

「っ……父、さん……」

「よしよし……よく頑張ったね、眞紀人くん」

 眞紀人くんは時間がある時には、必ずお父さんのお見舞いに来ていた。 お父さんが心配しないように、明るく振る舞ってたみたいだけど、本当はすごくしんどかったんじゃないかと思う。
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