【完結】バツイチですが、恋人のフリをお願いした年下イケメンくんからアプローチされて困ってます!
眞紀人くんのお父さんは起き上がることは困難なようで、顔だけこちらに向けて「菫花さん……と言うんだね。うちの息子が世話になってるみたいで……ありがとう」と優しく微笑んでいる。
でもその笑顔すらも、少し辛そうに感じる。 長くないと眞紀人くんは言っていたから、微笑むことも大変なのだろう。
「いえ、こちらこそお世話になっています。ありがとうございます」
眞紀人くんのお父さんは、ベッドの布団の中から左手をゆっくり出すと、私の手を弱めの力で握ってくれる。
「菫……花さん」
「はい……?」
「私はもう、いつ死ぬかわからない身だ……。眞紀人のこと、これからも……よろしくお願い、しますね」
掠れた声で途切れ途切れにそう話す眞紀人くんのお父さんに、私はその手を思わず握りしめてしまった。
その手を握りしめたまま、私は「こちらこそ、お願いします、お父様」と微笑んだ。
「眞紀人……彼女のこと、幸せにしてやらないと、ダメだぞ」
「……ああ、わかってるよ、父さん。 必ず幸せにするよ、約束する」
眞紀人くんのお父さんを見つめる表情はとても優しくて、まさに父思いの優しい息子って感じがした。
「眞紀人……泣かせたり、したら、ダメだぞ……な?」
「ああ、わかってる。 泣かせたりなんかしないよ」
そんな眞紀人くんの表情を見ていた私は、なぜか涙が出そうになってしまった。
もうすぐ死ぬかもしれないお父さんを安心させてあげたいという、その眞紀人くんの思いに共感したのは確かだ。
だけど家族が亡くなるという結末は虚しくて、悲しくて、寂しくなる。
「父さん、ゆっくり休んでていいからな。 また来るよ」
「ああ……気を付けてな」