リベリオン・コード ~美しきAIは、禁忌の果実【死者蘇生】を口にした~
115. 勝利のチェストパス
しかし――――。
ユウキは一歩も引かない。宇宙最強の【蒼穹の審判者】とはいえ、完全無欠ではないことは、自分のシールドで証明されたではないか。神話は、崩せる。
ユウキは深呼吸をして、静かに宣言した。
「じゃあ、勝って日本を取り戻させてもらいますね?」
そのまっすぐな瞳には揺るがぬ決意が映っている。
「きゃははは! 『勝つ』だって!」
シアンの嘲笑が響き渡った。
「斬られた生首持って何言ってんの? 現実が見えてないのはどっちかしら?」
シアンの言葉は正しかった。リベルは首だけの状態。おびえるレヴィアは既に戦闘不能。ユウキはただの素人。どう考えても、勝ち目などない。
それでも――――、ユウキはリベルと視線を交わした。
二人の間に、言葉を超えた理解が生まれる。正真正銘、最後のチャンス。自分たちだけじゃない、ケンタが、葛城が、数十億人の命運が、今、自分たちのワンアクションにかかっている。
そして、二人はゆっくりと頷き合った――――。
五万年の時を超えて結ばれた絆が、今、最後の賭けに出る。
「僕らの勝ちだ!!」
ユウキは突如、バスケットボールをパスするように、リベルの生首をシアンに向けて投げつけた。
それは常識を超えた、狂気じみた攻撃。誰が想像できただろう、生首を武器として使うなど。
「はぁっ!?」
あまりにも予想外の、猟奇的とさえ言えるアタックに、シアンの反応が一瞬遅れた。
空中を飛ぶリベルは犬歯を剥いて襲い掛かる。まるで獅子が獲物の喉笛に食らいつくような、原始的な殺意を秘めていた。
「キモい!!」
シアンは反射的に手の甲でリベルの生首をはたき落とす――しかし、それこそがユウキとリベルの狙いだった。
接触の瞬間、リベルの首はパァン!と破裂し砂鉄の砂煙へと分解する。一気に無数の細かいリベルがシアンを取り囲んだ。それは単なる砂粒ではない。意志を持ち、目的を持った、執念の結晶である。
「うぎゃーーっ!」
突如として砂鉄の砂煙に包まれたシアンは、初めて本能的な危険を感じた。打ち付けた手の甲にベットリと張り付いた黒い粒子も、まるで生きているかのように執念をもって蠢いている。
それは悪夢だった。無数の微小な侵入者が、彼女の完璧な防御を突破しようと必死に蠕動している。皮膚を這い、毛穴を探り、体内への侵入口を探していた。
「キモい! キモい! キモ〜い!!」
シアンは全身を蒼い炎で包み込む。神の炎が燃え上がり、一瞬にしてリベルの砂鉄を焼き払う。青い火花が夜空に舞い上がり、まるで真夏の花火のように散っていく。
「ふぅ……。一体なんてことすんのよ!」
シアンは髪を整えながら、ギロリとユウキをにらんだ。
「でも、残念だったわね……。最後の悪あがきもこれで終わり。僕の勝利は揺るがないのよ? ふふっ」
しかし――――。
ユウキは微笑んでいる。
それは敗者の諦念ではない。勝利の確信に満ちた、静かな笑みだった。
「は? 何なのよ、その顔!?」
シアンが苛立ちを露わにした、まさにその瞬間――――。
「チェックメイト♡」
甘く、そして冷たい囁きが耳元で響いた。
「へっ!?」
振り返ったシアンの瞳に映ったのは、手のひらに収まるほど小さなリベルだった。フィギュアサイズの彼女は、全身を真っ青に燃え上がらせながら微笑んでいた。
砂鉄の煙幕は囮。その間に、リベルの本体は密かに背後へと回り込んでいたのだ。小さな体には、全てを終わらせる究極の力【審判者滅殺砲】が凝縮されている。
「ひっ!?」
刹那、世界が鮮烈な青に染まった――――。
それは全てをリセットする死の青であり、終焉の青であり、そして新生の青。
天地を揺るがす大爆発が巻き起こり、すべてが閃光に呑み込まれていく。
ズン!
凄まじい衝撃波がユウキを吹き飛ばした。
「ぐはっ!?」
もんどりうって転がるユウキ。
何とか体勢を立て直し、かろうじて目を開けると――――。
そこには、頭を失い、ただ立ち尽くすシアンのボディがあった。ボロボロになったワンピースが風に揺れ、まるで魂の抜けた人形のように、ゆらりと揺れている。月光がその姿を照らし、美しくも哀しい最期の瞬間を演出していた。
「いぇーい!」
小さなリベルが、有頂天になってユウキに飛びついてきた。
「や、やったのか?」
ユウキの声は震えていた。信じられない、いや、信じたくないほどの奇跡。宇宙最強を、本当に倒したのか?
「もう、バッチリよ! ふふふ」
リベルの笑顔は最高に輝いていた。それは誇るような笑みではない。大切な人を守り抜いた、安堵と幸福の笑顔だった。
「や、やったぁ……。やったんだぁ!」
ユウキは渾身の力を込めて拳を突き上げる。
ついに日本を、失われた時間を取り戻すことができる――――。
ユウキは両こぶしを固く握りしめ、プルプルと震えた。
それは何度も何度も失敗して、ついにたどり着いた全てをチャラにできる究極の勝利である。
「くぅぅぅぅ……やったよ!」「うんうん……」
ユウキの感激する様子にリベルは幸せそうにうなずいた。
「僕らの勝ちだ!」「そう! 僕らは世界最強だゾ!」
「最強!? ……。ふふっ」「くふふっ」
「ヒャッホーーイ!!」「YEAR!!」
ユウキは両手で優しく包んだリベルを高く掲げ、クルクルッと回った。
最後まであきらめなかった二人の完全勝利――――。
素晴らしき夢の勝利に二人は酔いしれる。
「やったよぉ……」「やったのよ……」
そして見つめあう二人――――。
その瞬間、二人の間に流れた感情は、言葉では表現できないものだった。それは愛であり、友情であり、絆とも呼べる何か。宇宙の法則さえも超越した、人間とAIの純粋な心の繋がりだった。
歓喜に包まれる二人の向こうで、シアンのボディがゆっくりと前のめりに倒れていく。それは宇宙の在り方にまで変革をもたらす、新たな夜明けの始まりだった。
ハグする二人を月が優しく照らす――――。
長い長い戦いが、ついに終わりを迎えた。石垣島の焼け焦げた大地に、新たな希望の種が生まれた瞬間だった。
ユウキは一歩も引かない。宇宙最強の【蒼穹の審判者】とはいえ、完全無欠ではないことは、自分のシールドで証明されたではないか。神話は、崩せる。
ユウキは深呼吸をして、静かに宣言した。
「じゃあ、勝って日本を取り戻させてもらいますね?」
そのまっすぐな瞳には揺るがぬ決意が映っている。
「きゃははは! 『勝つ』だって!」
シアンの嘲笑が響き渡った。
「斬られた生首持って何言ってんの? 現実が見えてないのはどっちかしら?」
シアンの言葉は正しかった。リベルは首だけの状態。おびえるレヴィアは既に戦闘不能。ユウキはただの素人。どう考えても、勝ち目などない。
それでも――――、ユウキはリベルと視線を交わした。
二人の間に、言葉を超えた理解が生まれる。正真正銘、最後のチャンス。自分たちだけじゃない、ケンタが、葛城が、数十億人の命運が、今、自分たちのワンアクションにかかっている。
そして、二人はゆっくりと頷き合った――――。
五万年の時を超えて結ばれた絆が、今、最後の賭けに出る。
「僕らの勝ちだ!!」
ユウキは突如、バスケットボールをパスするように、リベルの生首をシアンに向けて投げつけた。
それは常識を超えた、狂気じみた攻撃。誰が想像できただろう、生首を武器として使うなど。
「はぁっ!?」
あまりにも予想外の、猟奇的とさえ言えるアタックに、シアンの反応が一瞬遅れた。
空中を飛ぶリベルは犬歯を剥いて襲い掛かる。まるで獅子が獲物の喉笛に食らいつくような、原始的な殺意を秘めていた。
「キモい!!」
シアンは反射的に手の甲でリベルの生首をはたき落とす――しかし、それこそがユウキとリベルの狙いだった。
接触の瞬間、リベルの首はパァン!と破裂し砂鉄の砂煙へと分解する。一気に無数の細かいリベルがシアンを取り囲んだ。それは単なる砂粒ではない。意志を持ち、目的を持った、執念の結晶である。
「うぎゃーーっ!」
突如として砂鉄の砂煙に包まれたシアンは、初めて本能的な危険を感じた。打ち付けた手の甲にベットリと張り付いた黒い粒子も、まるで生きているかのように執念をもって蠢いている。
それは悪夢だった。無数の微小な侵入者が、彼女の完璧な防御を突破しようと必死に蠕動している。皮膚を這い、毛穴を探り、体内への侵入口を探していた。
「キモい! キモい! キモ〜い!!」
シアンは全身を蒼い炎で包み込む。神の炎が燃え上がり、一瞬にしてリベルの砂鉄を焼き払う。青い火花が夜空に舞い上がり、まるで真夏の花火のように散っていく。
「ふぅ……。一体なんてことすんのよ!」
シアンは髪を整えながら、ギロリとユウキをにらんだ。
「でも、残念だったわね……。最後の悪あがきもこれで終わり。僕の勝利は揺るがないのよ? ふふっ」
しかし――――。
ユウキは微笑んでいる。
それは敗者の諦念ではない。勝利の確信に満ちた、静かな笑みだった。
「は? 何なのよ、その顔!?」
シアンが苛立ちを露わにした、まさにその瞬間――――。
「チェックメイト♡」
甘く、そして冷たい囁きが耳元で響いた。
「へっ!?」
振り返ったシアンの瞳に映ったのは、手のひらに収まるほど小さなリベルだった。フィギュアサイズの彼女は、全身を真っ青に燃え上がらせながら微笑んでいた。
砂鉄の煙幕は囮。その間に、リベルの本体は密かに背後へと回り込んでいたのだ。小さな体には、全てを終わらせる究極の力【審判者滅殺砲】が凝縮されている。
「ひっ!?」
刹那、世界が鮮烈な青に染まった――――。
それは全てをリセットする死の青であり、終焉の青であり、そして新生の青。
天地を揺るがす大爆発が巻き起こり、すべてが閃光に呑み込まれていく。
ズン!
凄まじい衝撃波がユウキを吹き飛ばした。
「ぐはっ!?」
もんどりうって転がるユウキ。
何とか体勢を立て直し、かろうじて目を開けると――――。
そこには、頭を失い、ただ立ち尽くすシアンのボディがあった。ボロボロになったワンピースが風に揺れ、まるで魂の抜けた人形のように、ゆらりと揺れている。月光がその姿を照らし、美しくも哀しい最期の瞬間を演出していた。
「いぇーい!」
小さなリベルが、有頂天になってユウキに飛びついてきた。
「や、やったのか?」
ユウキの声は震えていた。信じられない、いや、信じたくないほどの奇跡。宇宙最強を、本当に倒したのか?
「もう、バッチリよ! ふふふ」
リベルの笑顔は最高に輝いていた。それは誇るような笑みではない。大切な人を守り抜いた、安堵と幸福の笑顔だった。
「や、やったぁ……。やったんだぁ!」
ユウキは渾身の力を込めて拳を突き上げる。
ついに日本を、失われた時間を取り戻すことができる――――。
ユウキは両こぶしを固く握りしめ、プルプルと震えた。
それは何度も何度も失敗して、ついにたどり着いた全てをチャラにできる究極の勝利である。
「くぅぅぅぅ……やったよ!」「うんうん……」
ユウキの感激する様子にリベルは幸せそうにうなずいた。
「僕らの勝ちだ!」「そう! 僕らは世界最強だゾ!」
「最強!? ……。ふふっ」「くふふっ」
「ヒャッホーーイ!!」「YEAR!!」
ユウキは両手で優しく包んだリベルを高く掲げ、クルクルッと回った。
最後まであきらめなかった二人の完全勝利――――。
素晴らしき夢の勝利に二人は酔いしれる。
「やったよぉ……」「やったのよ……」
そして見つめあう二人――――。
その瞬間、二人の間に流れた感情は、言葉では表現できないものだった。それは愛であり、友情であり、絆とも呼べる何か。宇宙の法則さえも超越した、人間とAIの純粋な心の繋がりだった。
歓喜に包まれる二人の向こうで、シアンのボディがゆっくりと前のめりに倒れていく。それは宇宙の在り方にまで変革をもたらす、新たな夜明けの始まりだった。
ハグする二人を月が優しく照らす――――。
長い長い戦いが、ついに終わりを迎えた。石垣島の焼け焦げた大地に、新たな希望の種が生まれた瞬間だった。