その恋、連載にしてやるよ〜人気作家に溺れていくなんて、聞いてません〜
「赤で、ミディアム。少し酸が立ってるくらいがいい。」

(……すごい。こういう場に慣れてるんだ。)

女性をリードできる男――

今の時代、そう多くはない。

少し古くさいかもしれないけど、私はそんな男に弱いことを、自分でよくわかっている。

「神堂先生、執筆の件なんですが……」

我に返って切り出そうとすると、彼は指を口元に当てて、静かに「シー」と言った。

「今日は、仕事のこと忘れよう。……一応、疑似でも“恋愛”なんだよ。」

その“恋愛”という言葉が、どうしようもなく、胸の奥を叩いた。

「……」

私は何も言えなくなって、ただ頷くことしかできなかった。

「ところで、趣味は?」

突然話題を変えられ、少し戸惑いながら答えた。

「……読書です。」

「ははは。編集者らしい。」

笑いながら、神堂先生はワインのグラスを軽く回した。
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