その恋、連載にしてやるよ〜人気作家に溺れていくなんて、聞いてません〜
「でもさ」

と、神堂先生がグラスを置いた。

「君、そういう“理想の男”のことばかり言うけど――実際に目の前にいたら、ちゃんと恋できるの?」

「……」

「たとえば、そういう男が君に“俺のこと好きになれ”って言ったら?」

彼の目が、ふっと真剣になった。

「君、ちゃんと心、動く?」

まるで試されてるみたいだった。

そして私は、答えられなかった。

帰り道、私はタクシーに乗せられた。

「一人で帰れる?」と聞かれ、「あい」と答えると、神堂先生は笑って「ダメ。俺も付いて行く」と言った。

結局、二人でタクシーに乗り込んだ。

何もされなかった。

ただ、家の前で静かに降ろされただけ。

「ちゃんとお風呂入って寝て」と優しく言われ、「はいっ!」と敬礼。

ドアが閉まり、車が走り去ったあと、胸の奥に火が灯っていた。

――なんで、優しいんですか。
< 31 / 61 >

この作品をシェア

pagetop