その恋、連載にしてやるよ〜人気作家に溺れていくなんて、聞いてません〜
「早かったね。」

神堂先生は、グラスを揺らしながら、いつもの余裕の笑みで私を迎えた。

その笑顔に、また一歩、私は“恋”に引き寄せられていく気がした。

「あの……どういう用件ですか。」

私は神堂先生の隣に腰を下ろした。

夜のバー。まるで小説の中に入り込んだような空間。

「……ああ。一人で飲むのが嫌だったんだ。」

そう言われて、私はため息をついてテーブルにぐたっと突っ伏した。

「……神堂先生なら、女性に声かけまくって飲めますよね。」

すると、ふいに髪に触れる感覚が走った。

指先が、優しく髪をなぞっていく。

「どうせなら、綺麗な子と飲みたいじゃん。」

ガバッと顔を上げた。

何それ。今、何て言った?

「……綺麗⁉」

「うん。美咲ちゃんは、綺麗だと思うよ。」

――“美咲ちゃん”。

名前で、呼ばれた。

その一言で、全身が熱くなった。
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