その恋、連載にしてやるよ〜人気作家に溺れていくなんて、聞いてません〜
「……これも疑似恋愛ですか?」

なんとか絞り出した声に、神堂先生はワイングラスをくるくると回しながら言った。

「……恋愛って言ったら?」

心臓が跳ねた。

耳の奥が熱くなる。

わからない。

これが“ネタ”なのか、それとも――

私は、ゆっくりと、恋に落ちていく音を聞いた気がした。

「神堂先生って、彼女いないんですか?」

酔いにまかせて聞いたその問いに、彼は「ううん。」とだけ首を振った。

「……だからかな。恋愛小説、書けないの。」

思わず呟いた瞬間、神堂先生がふっとこちらを見た。

その目に一瞬、火が灯るのを見た気がして、ドキッとする。

「じゃあ、なぜ書くんですか? 恋愛小説なんて。」

「書きたいんだよ、心が燃えるような恋愛の話を。」

――いや、あなたなら相手を選びたい放題でしょ。

思ったけれど、口から出たのは別の言葉だった。

「してくださいよ、恋愛。」

私の声に、彼の目がすっと細くなる。
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