その恋、連載にしてやるよ〜人気作家に溺れていくなんて、聞いてません〜
こういうの、慣れてるつもりだったけど。

今度ばかりは、ちょっと質が違う。

私は仕事として任された。

編集長の指示。上司命令。断れるわけがない。

それなのに。

(私だって、好きで神堂先生の選任になったわけじゃない)

言葉にはしないけど、心の中で呟く。

顔を上げると、ちょうどその“噂の中心”の人たちと目が合った。

「あ……岸本だ。」

その瞬間、彼女たちは蜘蛛の子を散らすように解散していった。

ヒールの音が、遠ざかる。

私はため息を一つだけ吐いて、何も言わず歩き出した。

こういう時は、反応しない方が楽だ。

でも胸の奥に、小さなトゲが刺さる。

――いいよ。どうせ言わせておけばいい。

どうせ、すぐに黙らせてやる。

神堂慧の新作が、本当に世に出せたら。

私の名前が、その担当欄に載れば、全部ひっくり返る。

そう――見せつけてやればいいんだ。

私の実力を。神堂慧という難攻不落の砦を、私が崩す。
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